1章4話 「まだ絶望するわけには……」
【登場人物】
凛夜レイガ この物語の主人公。ゲームが好き。
異世界に来る前は引きこもり。
はなを探しに異世界に来た。
陽野森はな レイガの幼馴染。異世界に転生した。
現在行方不明。
シューメル 悪魔教に滅ぼされた集落に住む老人で
唯一の生き残り。
ヴェイル 世界のパワーバランスを崩した。
史上最強とも言われる存在。
【悪魔教:世界中で暗躍する組織。】
エスパル 大幹部の1人。サイギョクを襲う。
俺は悪魔教大幹部エスパルに殺された。スマホを見ると悪魔教襲撃の7日前……8月24日に死に戻った。
「おい、どうしたんだ、レイガしっかりしろ!」
「お、親方……」
この日に死に戻るということはここに何か重要なものがあるのだろうか。ゲームではオートセーブされるときは大体重要なものがあるものだ。
「よしっ、今日はここまでだ!レイガおつかれ!」
「親方もお疲れ様です!あの…親方」
「ん?どうしたんだ……レイガ」
「…………この街に悪魔教が来ます。」
「・・・・・・ッ!おい、お前。どこでそれを聞いた。」
死に戻り…あれ声が出ない。しかも、胸が苦しい。あぁ、これもラノベとかのように相手に伝えられないのか。じゃあ、コイツを使って、こう伝えるしかないか。
「コイツで俺は少し未来が見えるんです。」
俺は日本から持ってきたカバンから鏡を出す。俺はてっきり日本から何も持ってきてないと思っていたのだが、今日から3日ほど前にシューメルのところを訪れた際に、平原で見つけたものだ。
「うむ、なるほどな。」
「この村の騎士団を集めて、立ち向かうか………俺たちも戦うことになるかもな…」
その後、騎士団をはじめとするこの街の大人、、、そして、俺は対策を練るために3日間の準備を開始した。俺は悪魔教の脅威を知るシューメルから助言を貰いにシューメルを訪れた。
「ほう、なるほどな……子供たちはこちらの集落側へ避難させたらどうじゃ…それにいざというときの退路としての」
「たしかに…それならいいかもしれない!ありがとうシューメル!!」
「また何かあったらおいで」
そして、迎えた8月31日。俺たちは迎え撃つ準備はできていた。
「さぁ、こっから来るぞ!」
しかし、あの時間になっても来ない……なぜだろうか。1人の男が叫んだ。
「空だ!空から来るぞ!」
その男は次の言葉を放つことがなかった。
「くそっ、どうして……」
櫓の上にいた弓を放つ担当の人たちは全員殺された。そして、多くの足音とともに忌々しいあの男の声が聞こえた。
「ふん、我々が来ることを見抜いていた奴がいるようでアリマスが……そんなのは無駄でアリマス!お前たち!行きなさい!」
その掛け声と共に多くの悪魔教が突撃してきた。
「て、撤退!」
俺たちはシューメルの集落へと撤退を図った。
「みんな!悪魔教だ!逃げろ………………は?」
俺たちが目にしたものはそれは現実だった。
シューメルの集落にも悪魔教がいて、先に避難していた街の人たちを襲っている…そんな光景。
シューメルがこちらへと来た。
「シューメル…どうしてこんなことに…」
「わからない……ただ突然現れたのじゃ……」
「くそ。これじゃ、ダメだ。」
俺は誰にも死んで欲しくなんてない。ただ、それが傲慢なのはわかってる。だから、街の子どもたちや、親方たちのような良くしてくれた人たち…名前や顔の知る人たちだけでも絶対に助けたかった。
「ハァッハハハハ、私のほうが一枚上手であったようでアリマスねぇ……」
「エスパル……お前だけは絶対に許さない。」
「周りと一緒に殺して差し上げるでアリマス。」
エスパルは手を前に突き出し、
「さよならでアリマス。」
俺は8月24日にまた戻った。今度は1人で立ち向かう…しかない。少しでも街から引き離す……しか。
襲撃当日。俺は鍛冶屋から剣と弓、矢を盗んだ。そして、来る前に迎え撃つ。エスパルだけでも討ち取る。そのためだけに。少しした後、悪魔教の集団が来た。エスパルに標的を絞り、矢を放った。エスパルに命中した………それなのに、なぜかエスパルは生きていて、先頭を歩いていた奴が死んだ。
「ほぉ、びっくりしたじゃないでアリマスか。」
俺は悪魔教の奴に気を失わされた。目が覚めると、俺は街の近くの見晴し台に縛り付けられていた。
「おや、目が覚めたでアリマスか?」
「エスパルっ!!」
「下を見るでアリマス。ほら、街が燃え、人が死んでいく……これが私から敬愛なる悪魔様への忠誠の証なのでアリマスよ!」
「イカれてやがる……」
「私から言わせれば、信仰心のないあなた方のほうがおかしいのでアリマスよ。」
俺はポケットに入れていた鏡をたたき割り、破片で手首を切った。
「命を粗末にするのは許さないでアリマス!」
「エスパル!命を粗末にしてんのはお前だ!何回だって……やり直してやる!」
「ーーーおい、レイガ」
そう何回だって、俺はまだ絶望するわけにはいかない。