表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aura - Lucent-シイリノエイ編  作者: 国見炯
第一章・シイリノエイ(完)
PR
42/49

守りたかったモノ・1



 凛が意識を取り戻したのは、倒れてから1時間程経っていた。相変わらず頭痛や吐き気はあるものの、意識を失う前に比べたら雲泥の差だった。


「リーンさん。大丈夫すか? 顔色は随分マシにはなってるんすけどね」


「ん。まだ気持ち悪いけど、さっきよりは全然マシになりました」


 状況を把握する為に部屋を見回すが、何も変わっていない。相変わらず扉と窓には外に出られないように、強力な結界が張られている。


「リーンさんと俺なら抜け出るっす。ただ、陛下が俺たちを外に締め出しているんで、状況が分からないんすよね。加護持ちのヒース様とフェルディナント殿は入ってったっすね」


「恩恵は遠ざけて、加護は入れるんだ…」


 頭痛の所為で上手く考えが纏まらず、凛は少しでも整理しようと紙に書き出す。

 ネイリールがそうやって動いたという事は、余程の事が起きているという事はわかるが、それ以上の事はわからない。


「来客が来たのは知ってるっす。

 ただ、外門から来たフードを被った2人がロウリンユに足を踏み入れた瞬間、竜に携わる恩恵持ちが倒れたっす。

 俺は恩恵持ちのふりをして、辛そうにしながら現場を指揮したんスが……ディネール様が来て、その2人を城へと案内していったっす」


「城も結界が張ってありますよね」


「そうっす。ある意味城という強い結界の中に閉じ込めたおかげで、恩恵持ちが回復していったんすよ」


 テノが困ったように肩を竦め、凛に向き直る。


「テノさんは大丈夫だったんですか?」


 恩恵持ちのふりをしたと言ってたけれど、辛くはなかったのだろうかと聞いてみれば、テノは大丈夫とばかりに頷く。


「リーンさんのおかげで、間に合ったすから」


「……あ」


 言われてから気付く。テノの変化に。

 偽装されているが、よく見れば凛にその変化がわからないはずがなかった。何れなるとはわかっていたが、こんなに早くなるとは思っていなかった。


「竜還り…」


「そーす。加護を一気に通り抜け、竜還りになったんすよ。人間の寿命が終われば陽竜として蘇るっす」


「そっか…」


 凛がテノとの距離を縮めた分テノの力が強まり、加護を上回る力がテノの中から溢れてきた。

 それを偽装し、凛の正体を誰にも悟られないように、恩恵持ちのふりを続けた。

 ネイリールは国を統治するだけに、テノの変化を感じっているかもしれないが、凛の正体を秘密にする為に口を噤んでいるのだろう。


「陛下がリーンさんをここに閉じ込めるように命じたと思うっす」


「…なんでそんな事を」


 凛の中では疑問でいっぱいだが、テノは瞳を少し伏せ、首を横に振る。


「アレは、俺たちにとっては良くない…って言っていいのか迷うすが、持ってきたんすよ。加護持ちのヒース様やフェルディナント殿の2人が耐えられるかは、賭けだったと思うっす。

 陛下のフォローも入ったとは思うんすが」


「……」


 本来なら凛に見てもらうのが1番いいはずだが、この世界の知識がない凛を表に立たせない為の措置だろう。

 水竜であるディネールは、持ってきたモノに対して、中身が何かを当てるのは時間がかかるかもしれないが、ネイリールは気付いてしまうだろう。


「(俺がわかったぐらいっすからね。陛下もわかるっすねぇ)」


 陽竜のテノと対の闇竜であるネイリール。

 凛を閉じ込めた理由も、テノはわかってしまう。たとえ凛が外に出たいと言っても、本音ではこの屋敷にいてほしい。

 それはテノだけではなく、ネイリール、ヒース、フェルディナントにとってもそうだろう。


「…オレも見たい。ううん。違う。オレが見なきゃいけない気がする」


 ここ数日、収まる事のなかった不安。その原因は今回の件だと、脳裏に音が鳴り響く。

 誰もが凛を守ろうと動いてくれる。

 凛の願いも叶えてくれた。

 でも、今回だけは奥に引っ込んでいてはいけないと、白竜である凛が奥から姿を現した。

 不安を打ち消すようにのめり込んで作った玉を全て鞄に詰め込み、アクセサリーを身に付けた。


「リーンさん…」


 引く気のないリーンに、テノは一つだけ願いを口に出した。


「ここで待っていてほしいっす」


 他国からの使者。

 この国とは正反対の事を掲げている、最も科学を進化させた国。テノを殺しにきた子供たちは、その国の出身者だ。

 テノはそれを凛に話した事はないが、何となく感じているのかもしれない。凛本人が意識した途端、白竜としての膨大な量の知識が脳裏を駆け回っただろう。

 凛自身は何も話してはいないが、テノが自分の身に起こった事を考えれば、凛が知らないとは思えなかった。


 テノ自身、突然髪の色全てが金色へと変わり、瞳も変わった。その時流れ込んできた竜の知識。

 受け入れる事に問題はなかったが、急激にこの世界が色褪せて見えた。

 凛がいなかったら、この世界に絶望するだけだっただろう。

 だからこそ凛の願いを叶えたいが、今回の件はどうしても首を縦にふる事は出来なかった。


「ううん。オレは行かなきゃ。そう……行って助けなきゃ。早く」


 凛の瞳の色が白金へと変わる。


「──ッ」


 凛自身意識しているわけではないだろうが、髪の色も白へと変わっていく。

 凛の変化にテノは涙腺が緩むが、ソレを抑え込み、凛を視界へと収める。完全に偽装は取れているが、本人は気付かず窓の外を眺めた。

 精神は既に城に飛ばしているのかもしれない。

 どちらにしてもそれはまずい。本体は結界の中にいるから大丈夫だろうが、精神を傷つけられたらただでは済まない。


「リーンさんッ!! 俺も一緒に行くっす。

 戻ってきて下さいっす!!」


 陽竜の竜還りであるテノの声。そのテノの声が届いたのかはわからないが、凛の指先が微かに動く。


「リーンさん!! こっちに戻って!!!」


 悲鳴のようなテノの叫びに反応するように、凛はゆっくりと瞳を開けた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ