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*第三十九日目 六月十九日(木)

 いよいよ最終日だが…目覚めは『もっと寝ていたい』。そんな気分だ。時刻は七時半近く。

 そう言えば、何時頃だろう? Tさんから、部屋の電話にTELがあり、「ユキちゃん知らないか?」みたいに言っていたが…夕べ遅くまで引き留めてしまったから…『二人はどうしただろう?』と思いながら、買い置きの缶コーヒーを飲んだはず。

 かなりの寝不足・二日酔い。ダラダラとベッドから()い出る。

 トイレに行ったり、軽くシャワーを浴びたり。でも、ちょっとフラフラするし、お腹がグルグル鳴っている。『でも、残りは10キロ。何とかなるさ』と、ノロノロと準備に掛かる。

 ザックとポーチは乾いているが、ズボンはまだかなり湿っている。外を見れば、雲は多いが雨はなさそう。それよりも、かなり蒸している。そこで本日は、室内着にしていたナイキの短パンで行く事にする。生乾きのズボンは、かなりスッキリとしたザックの中へ。

 八時を回った頃、杖を持って部屋を出る。今日は電車にも乗る事だし、白装束は一切無し。

 ドアが半開きになっていたTさんの部屋をのぞけば、もぬけの殻。とっくに出発したようだ。


 宿を出て、アーケードを少し奥に入った喫茶店へ。ここが、宿指定の朝食会場。料金は、昨晩宿代と共に払ってある。

 半切りの厚切りトースト二枚。サラダの上にベーコン二枚と、スクランブル・エッグ。それにフルーツとホット・コーヒー。いつもなら全然足りない分量だが、今朝は胃がムカムカ。やっとの思いで押し込む。『喫茶店でモーニングなんて、何年ぶりだろう?』などと思っているうちに、再びお腹がグルグル。こちらはまだ足りない感じだが、グズグズもしていられない。

 アーケードを抜け、昨日通ってきた「県道21号」に出る。

 クラクラして、少々足元がおぼつかない。おまけに、かなり蒸している。幸い、朝の通勤・通学がひと段落した時間帯。歩道もあるし、歩くのに支障は無いが…繁華街を過ぎ、振り返れば右後ろに「丸亀城」が見える、「土器川」を渡る橋の上。

『ヤバイ!』

 お腹が「ギュ~ッ」と来た。ちょうど川向こうにコンビニ。あわててトイレに駆け込む。これで本日分は完了。お腹スッキリ。ついでに頭もスッキリ。

 ここから2キロほど行けば、最後のお寺がある「宇多津町」に入る。「へんろマーク」に従い、右の市街地方面へ。

 九時半頃、いよいよ「結願(けちがん)」のお寺に到着。


《第七十八番札所》

仏光山(ぶっこうざん) 郷照寺(ごうしょうじ)


  本尊 阿弥陀如来

  開基 行基菩薩

  宗派 時宗


 神亀二年(725)、「行基菩薩」が開創。「仏光山道場」と命名。

 大同二年(807)、「弘法大師」が修復。

 正応元年(1288)、「一遍上人」が逗留し布教に努め、念仏道場として栄える。「時宗」に改宗し、寺名も「郷照寺」と改号。

 天正の兵火で焼失するも、文禄二年(1593)に再興される。


 曇り空の午前中。古い街中のお寺。

 それほど大きなお寺ではないが、静かで良い雰囲気。最後だからと言って、特別な感慨は無い。気になるのは、ユキちゃんの事ばかり。当然寝不足だろうけど、『大丈夫かな?』『二日酔いじゃない?』『ちゃんと歩けてる?』。


 お参りを済ませ、杖を納めてお寺を出る。

 この旅の始点であり、終点となる「坂出」まで、3キロと少しだが…

『何いまの?』

 目の前を走り抜ける物体。

『イタチ? 街中なのに』

 そんな「宇多津」の街は良い感じ。

 (はず)れの川を、歩行者専用の橋で渡れば街の郊外。

「高松丸亀線」の線路を越え、再び県道に戻る。少し行けば、すでに「坂出」市の一部。市街地へは、「へんろマーク」に従い旧道から入る。

 旧道に入ってすぐは、公園内をまっすぐ突っ切る道。まだお腹がグズつくので、『トイレがあるうちに』と立ち寄ってみるが「不発」。


 旧市街地を通り、アーケードを抜け、やがて駅から来ている道へ。

 一ヶ月以上前、ここを通って「八十八ヶ所」の旅に出たわけだ。

『帰って来た』

 駅前に到着。

 ここで、最後の記念撮影。映画やテレビ・ドラマでなら、これで「ジ・エンド」となるのだが…遍路の旅が終わったからといって、明日からも生きていかなくてはならない。

『何か変わったのだろうか?』

 懐かしさはあるが、やはり特別な感慨は湧いて来ない。それよりも、気になるのはユキちゃんとの事。この先どうなるのかはわからないけれど…とにかく、旅は終わった。



本日の歩行 10・05キロ

 13072歩

累   計 1372・36キロ

178万2895歩



 駅構内に入って時刻表を見れば、間もなく「11時06分 坂出発 岡山行」がある。先ずは「みどりの窓口」へ。前に並んだおじさんは…

『え?』

「宇都宮」までの「往復」と告げている。

『何もこんな所で…そんな人がいなくても』

 続くこちらも「宇都宮」まで。思わずキョトンとした駅員さん。

「往復じゃなくていいんですか?」

 もちろん“Oneway Ticket to Ride”.

 これが「共時性」―「シンクロニシティー」―ってやつか?


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