第八話 調査の行方
自分の目の前には、体長10mはあるほどのカブトムシが寝ていた。周りの木々はなぎ倒され、どのルートを通ったのかわかりやすい。
「なによあれ……でかすぎる……」
木の後ろに隠れて様子をうかがっており、少し離れてはいるが十分大きかった。分析眼では
◤クアッドビードル(変)◢
となっている。(変)とは変異種のことだろう。
「クアッドビードルの変異種らしいですが……」
「クアッドビードルって、普通は50cmくらいよ!なんであんなにも……」
さらっと言ったが、普通の大きさでも50cmあるのか……虫は苦手ではないが、そこまで大きいと苦手意識も湧いてくるな……
しかし、ミレイの声は予想以上に大きくなってしまい─
モゾッ
─当然のように起きてしまった。そして、おそらく音が出たところである、我々のいるところめがけて角で薙ぎ払ってきた。間一髪でよけたものの、木々は倒れるどころかひびが入っていた。当たっていたらどうなっていたことやら……
そして、それからはずっと逃げに徹していた。なるべく被害が出ないように同じところをぐるぐる回りながらだが。何度かカロイ君やミレイが攻撃を仕掛けてみるものの、少し外骨格にひびが入る程度で、修復機能がついているのかそのひびも治っていく。カロイ君は走りながらなので力が出せていないというのもあるが……
こちらがよけれているのは、ミレイの未来視と念話のおかげだろう。しかし、ずっと走ってきたせいでだいぶ疲れてきてしまった。だけど、ミレイから朗報が届く。
<あいつの弱点がわかったわ!後ろ側の外骨格の下50cmくらいのところ!そこに結構大きめの神経と血管があるの!>
<だがどうする!俺の攻撃でしっかりダメージを与えられても、外骨格を砕く程度だ!お前の短剣でも届かないだろう!>
<そう!だからカロイが砕いたところをケンヤの刀で刺すの!いいわね!?>
<う、うん>
戦いになると、カロイ君は性格が変わる。一人称すらも変えてしまうので、二重人格を疑わせるほどだ。
<その弱点に血管があるせいで血が少し出ちゃうかもしれないけど気にしないでね!
このまま注意を私に向けておいて、二人は木の上で待機してほしいの!そして私が戻ってきたタイミングで飛び降りて、カロイが外骨格をはがしてケンヤが刺すの!いいわね!?>
そしてミレイと別れ、木の上へ上る。カロイ君も一緒にだ。そしてクアッドビードルはミレイの方向を追っかけていく。そして、しばらく待った後、ミレイが戻ってきて─
ガキンッ
─カロイ君が外骨格を砕いた。同時に自分も飛び降り、少し勢いを止めたクアッドビードルの弱点向けて、刀を突きさす。そして、クアッドビードルからは血が噴き出した。そして動きを止めて、地震の傷を治そうとした。
が、エネルギーを使い果たしたのだろう。やがて回復ができなくなり、ピクリとも動かなくなった。
「……で、どうするよこれ?」
ミレイがクアッドビードルの死骸をたたきながら言った。
「とりあえずしまっておこうか。」
と、亜空間収納に入れようとして気づいた。……入るのだろうか?とりあえず角を入れてみるか...と、入れてみたタイミングで、クアッドビードルの巨体がするっと中に入っていった。どうやら一部でも入れたら全部入れてくれるらしい。とても便利な機能である。
「んで、どうすっかな~...帰りながら考えればいいか」
「そ、それなんだけどさ...ぼっぼくたちの武器や防具を作るのはどうかな...」
「あれで?」
「ぼっぼくの大剣でもあれだけしか傷が、つっつかなかったから、結構いいと思うだけど...」
「確かにねぇ...」
「そっそれに僕の大剣もケンヤの刀も、はっ刃こぼれしてるでしょう?」
一度出してみた。確かに、今まで手入れなどほとんどしてこなかったせいで、かなりがたがたである。なんか元に戻らなさそうだし、新しく作ってもらうのもありか。
「本当だ。じゃ、新しいものを作ってもらおうか!でも、ひとまずイチアの街に戻ってからね!」
とミレイが言う。どんなものにしようかな~と考えながら、僕たちはイチアの街に戻り始めたのだった。
後付けがなんぼのもんじゃいどんどんやってくでー