第十一話 修行の終わり
遅れてごめーーーーーーーん!
ミカエルが言った開戦日まで、残り一ヶ月少しとなった今日、
「も、もうそろそろ向かったほうがいいんじゃ⋯⋯」
と、カロイくんから提案があった。
「なんで?別にあと一ヶ月くらいあるんだし、まだ修行していればいいんじゃない?」
「い、いや、なんか最近、ま、街でこんな話を聞いたんだよ⋯⋯
ま、魔族領との貿易を完全に停止させる、って⋯⋯」
「えっ⋯⋯確かにそれは早く行ったほうがいいかもね⋯⋯」
そんなわけで、フラビッツへもうそろそろ修行を終わりたい旨を伝えると⋯⋯
「そっか。もう、時間なんだね。」
「時間⋯⋯っていうのは?」
フラビッツは、少しずつ話し始めた。これまでの様子とは打って変わって、慎重に、言葉を選んでいるような感じもあった。
「君たちと最初に会った時、僕に会う理由は『強くなりたい』だった。もちろん、僕に会いに来る人は大体そうなんだけどね。ただ、そういった人たちはそのあとに理由も言ってくれる。『金を稼ぎたい』とか、『好きな人を護りたい』とか。僕は魔物だから、普通の人にも言えないことを言ってくる人もいた。『反乱を起こしたい』とかね。
だけど、君たちはその理由を一切言わなかった。もちろん僕の勘なんだけど、何か使命を負ってるんじゃないかってね。それも誰にも知られたくないような。」
どうやら、最初に会った時からわかっていたらしい。普段のあの様子も素のような気がするが、主として、かなり論理的思考力⋯⋯のようなものも兼ね備えているのだろう。
「それに、その『使命』はそんな生易しいものじゃないと思うけど、君たちが自分から思い立ってその自分の目標を『使命』って思っていないのもわかる。君たちの様子を見ていれば分かるんだ。だって、そこまで乗り気じゃないでしょ?」
そこまで見抜かれていたとは。これが本来の主なんだろうな。
「僕は君たちのことを気に入ってるからね、できればそんな危険なことにはいかせたくない。でも、君たち二人が自分から行くと言ったら、行かせてあげることしかできないんだよね。
なぜって、僕は魔物だ。使い魔、従魔にでもならない限り、他種族のいさかいに入るわけにはいかないし、そもそも僕は森の主だ。僕は僕の領域を保護する義務がある。」
もしかして、初日に「従魔にしてくれ」って言っていたのは、このことが原因なのかな⋯⋯
「ただし、言ったでしょ?僕は君たちを気に入っている。だからこそ、強くなってもらいたいんだ。
てなわけで、僕と勝負だ。僕に勝ったら、行っていいよ。今回ばかりは僕も本気でいくよ!三人まとめてかかってきなさい!」
これまで本気じゃなかったの!?っていう疑問は置いておいて。よくあるシーンではあるけれど、これほどに自分の気合が入ったのもこれまでなかったのではないかと思うほど、感情が高ぶっていたし、あちら側の迫力も、凄まじかった。
早速、フラビッツが木々の間を飛び始めた。修行の成果で、反応速度も上がっている。おかげで、目で追うことがそこまで苦ではなくなったが、未だに攻撃のタイミングがわからない。攻撃の態勢で向かってきていても、途中で引き返してしまうのだ。
<ミレイの能力の『未来視』で攻撃かどうかわからない?>
念話で聞いてみる。
<私の未来視は、フェイントかどうかは分からないの。相手がこのまま動けば、どこに当たるかがわかる、ってだけのものなの。>
どうやら、フラビッツ相手にはあまり有効にはならなそうだ。だが、フェイントでもよけなければ当たってしまうものもあるので、ミレイもなるべく教えてくれている。
しかし、速度が速すぎるせいで、フラビッツの攻撃に当たってしまった。体当たりのついでに爪での攻撃もしてきたせいで、引っ搔かれてしまった。
「ケンヤ!」
カロイ君がこちらに来て、回復させようとする。が、死角からのフラビッツの体当たりでよろけてしまう。爪攻撃も当たったようなので、カロイ君は自分自身を回復させる。その間もミレイはフラビッツの行動を読みながら追い詰める。
ミレイから念話で教えてもらったとおりに、刀の先端で地面に魔法陣を描きながら、フラビッツの攻撃を防いでいく。防げてはいるものの、どうしてもふらついてしまうので、立て直すので精一杯なのだ。その瞬間──とてつもない衝撃波が、辺りを襲う。
カロイ君の攻撃だ。こちらにも若干のダメージはあったが、こちらに近いところでフラビッツがよろめいたので、これ以上ない攻撃チャンスだ。
刀に付与された魔法付与を発動させ、炎をまとい、フラビッツを攻撃。
フラビッツは、地面に落ちたのだった。




