表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

ヘリオ スキルの解明

 ぷかぷかと湯舟につかった。女児となった自分の体を見回すが何の感慨もわかない。それもそうだ。転生以前から性欲というものが全くと言っていいほどなかった。

(ふう……)

 しかし、先ほどのケローネの転倒には驚いた。気を失って泡を吹いていた。慌てて医師を呼んで対処してもらったが、ケローネはまだ眠っている。話せるようにはなったが、どうやら“恐ろしい幻覚をみて驚いて転んだ”という。医師は血液やマナの状態をみたが異常はないようで、スキルを使って精密な調査をしたが、やはり異常はないようだ。単純に、ショックとなる事がおきて気を失っただけのようだ。


(いったい何をみたのだろう?)

 と考えていると、なにか妙な感覚を覚えた。湯が揺れているのだ。自分の体が動いているとか、そういう感じでなく、妙な……自分の少し離れた位置で、波紋がたち、もぞもぞと魚が泳いでいるような感じだった。

(何か……異常がおきているのか?)

 時折、スキルを授かった直後に力が暴走する事があると聞く。だがたいていの場合、スキルの行使者は、力を四肢のように使っている実感をもつものだ。―特に(外影響類)周囲の物質に影響を及ぼす、操る形のもの―は、魔物ですら感覚が鋭いと聞く。そこでふと、ある事を思い出した。


(そういえば、さっきの妖精は完全な“水”だった)


 もし、あれがスキルの暴走と考えるとおかしなことがある。普通、スキルの類型・分類はまたいで与えられる事はない。外影響類(物質操作)、内影響類(精神操作)、回復類(生命力にかかわるものの操作)、擬人化類(意思を宿し、操る)主にスキルはこれらの分類があるが、ひとつの類型のスキルを与えられたら、その類型以外のスキルは習得できない。複数スキルを与えられたり、スキルが成長し、派生する事はあっても、この壁を超える事はできないのだ。

(ではなぜ?)

 ヘリオは考えた。水使い、蛇水術。自分で操っている実感がないのに、なぜ先ほどの妖精は……、あれは別の誰かのスキルととらえるのが妥当だろうか?

 

 ふと、ヘリオは湯の中をごちゃごちゃにかき回した。静かに波紋をみて追いかけていたが、いつまでたっても“そのもの”を捕まえることができない。水流の流れ、何かが泳いでいる感覚はあるのだが。

「くそ、捕まえてやる……妖精め!!」

 ヘリオは勢いよく手をばたつかせる、水しぶきが固まりとなってヘリオ自身の視界すらも多い隠した。が、その瞬間、右指先に妙な感覚があった。少し硬い、ツメの表皮のような感覚が並んでいるような、それを逆の手で捕まえた。

「やったぞ!!スパイか!!女児の裸を見ようだなんて……あの悪ガキのレネたちの差し金か!!」

 ぐっと握った手を顔の前まで近づける。

「ヒィッ」

 と声がでた。目の前には、水で形づくられてはいるものの、少し硬い感触を帯びた……舌をペロペロとだして、細い黒目でこちらを睨め付ける……蛇がいた。

 卒倒しそうになった所で、後ろで声がした。

「残念、あたしはこっちでした」

 そこには先ほどの妖精が(さっきは気づかなかったが、まるでお姫様のように髪の毛を縦に盛りつけ、ツンとしたキツネ目に、厚ぼったい唇をもつ、海外セレブのような)彼女が、意地悪く腕をくんで笑っていた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ