表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第四章 紗華の大禍の誕生・中編
80/217

花街 其の五

 ──ガッ!!


 それは一瞬の出来事だった。

 殴りかかった筈の無月(ムーユエ)の兄貴分だという男は気が付けば地面に組み敷かれていた。それも馬角(マー・ジャオ)にではなく、小柄な烏白(ウーバイ)の方にである。


「クソッ、どきやがれ!!」


 悪態をつく彼は起き上がれないらしく、その場でジタバタと足掻いていた。その光景に無月は唖然としてしまった。


 ──兄貴を一瞬で?


 彼も用心棒をするだけあって決して弱くはないのだ。


「ちょっと、暴れないでよ! ねぇ、無月。この人は君の知り合いなのっ!?」 


 烏白の問いかけにはっと我に返った無月は慌てて二人の間に割って入った。


「こいつがお前達に紹介しようとしてた俺の兄貴分だ! てか、兄貴も何でいきなり殴りかかったりするんだよ!?」

「はっ、紹介? こいつ等はお前を殴った奴の仲間じゃないのか?」


 起き上がった彼は不服そうに二人を指さしている。どうやら彼は烏白と馬角を先日無月に絡んで来た連中だと早とちりしたらしい。


「俺がこんなちびっ子とひょろい奴に負けると思うのかよ」


 そう言ったものの、目の前で一瞬にして自分よりも上背のある男をのした烏白相手には全く説得力がなかった。

 その後ろで何とも言えない顔をしている馬角が気にかかった。


 ──武芸の嗜みがあるは烏白だけなのか? 烏白は馬角の護衛? とてもそうには見えないけど……? 


 二人は商人だと聞いていた為、違和感を感じながらも無月は兄貴分の(カイ)に理由を軽く説明した。


「そんな割の良い話があるのか?」


 彼はジト目で無月を見つつ,小声で言った。彼は冷静で頼れる男であったが、無月が絡むと途端に過保護になる。


「道案内をしただけで、これだけくれた」


 指で金額を示すと凱は目を瞠る。


「何か裏があるんじゃ」


 更に眉間の皺が濃くなった。安心させるつもりが逆効果だったようだと悟り、無月は慌てて言い繕う。


「本当に世間知らずの坊っちゃんが商人の真似事をしてるだけかも。隠しちゃいるが、品も良いし。金も入るんだし、様子を見よう」


 納得しない兄をどうにか言い含め、楼主に口利きをしてもらう約束取り付けた無月はほっと息をついた。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ