呪いの剣 其の三
「──玉、貴女はその子に何をしたんですか!?」
いつもののほほんとした様子とは打って変わって、剣呑な雰囲気を纏った天天が嘗て姉弟子だった妖狐──玉と向かい会っていた。
「あら、思ったより早く見つかっちゃったわ」
あらあらと口元に手を当てて笑う玉の後ろには、青白い顔で倒れ込む月の姿があった。その手元には悍ましい怨念を帯びた剣が握られている。
「私の問に答えて下さい!」
天天が玉に詰めよるも、彼女は笑うだけだ。
「貴女って昔から面白いものを拾って来るわよね。でも、今回のこの拾い物には凄く驚かされたわ」
そう言って、玉は月を示した。
「あの邪眼があれば、あの妖魔のの湧き出る妖峰山の主になれる。貴女だって気が付いたでしょう?」
「!」
天天は歯噛みした。天天も玉の言うように月の邪眼の事は気が付いていた。
──でも、月は力を使いこなせていない。それに力に圧されている、このまま大人になれるかも怪しい。
「でも、この子はまだ力を使いこなせていない」
天天の思考を読んだ様に玉が言う。
「なら、使える様にしてあげれば良い。そうでしょう?」
「彼女が邪眼を使いこなせる様にして、貴女に何の意味があるのですか? 貴女が彼女の力を手に入れるつもりとでも?」
「それも良いわね」
玉の返答に内心ぎょっとする。
──流石にそれは無理だ。他人に宿った邪眼を奪い取るなど聞いたことがない!
天天は玉の表情を伺うが、彼女は妖艶な微笑みを浮かべたまま表情に変化はない。
──もしそんな方法があれば、この玉という妖狐はかなりの脅威になるでしょうね。
玉は天天よりも長い時を生きた妖魔である。その妖力もその知識も天天よりも勝っているのは間違いないだろう。もしこの妖狐がそんな力を持ってしまったら、まず間違いなく混沌を撒き散らすだろう。
──考えるだけでぞっとする。
天天は月をちらりと見た。顔色は悪いがまだ息はしているようだ。
──一先ずは、月をこの場から離すことが先決ですね。
天天はくるりと身を翻すと狐の姿になった。そのまま、一気に玉に向かって突進した。




