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紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第三章 紗華の大禍の誕生・前編
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霊狐 其のニ

 古椿の霊の件があってからも(ユエ)は時折山へと分け入っていた。

 例の医者の手掛かりがあるかも知れないと思ったからだ。古椿の霊を封じていた護符らしきものはあったのだが、経年劣化で元の状態が分からなくなっており、あまり役には立たなかった。

 そんな折、月は思わぬ出会いをした。狐を見つけたのだ。それは妖狐であった。


 ──妖狐は人を化かすのがのが得意というけれど、あれは誰かを騙すつもりだったのかしら?


 月が妖狐を見つけた時、彼女は猟師の罠にかかっていた。注意深く観察し、あの狐を罠から外してやったが、その後特に危害を加えられる事もなく無事家に帰ることができた。

 本当にただ罠にかかっていただけならば、随分と間抜けな妖狐である。


 ──本当にあんなところで何をしていたのかしらね。


 ふと、ふかふかの毛皮の感触を思い出し、少しニヤけてしまった。


「また、会えるかしら?」

「誰に?」

「ひゃぁ!!」


 突然背後から声をかけられて月は飛び上がる程驚いた。


「もしかして、昨日のお姉さん?」


 その声の主はあの狐だった。今はどうやら人の姿をしているらしく、声は月の頭上からしている。


「ふふ、驚いた?」


 彼女は月を驚かせた事が余程嬉しいのか、楽しげに笑っている。


「ええ、とても」 


 ドキドキと高鳴る心臓を抑えながら、月は何とか答えた。


「ふふ、警戒しなくても良いわ、と言ってもそうはいかないわね。昨日も一人で山にいたし、何をしているの? 良家のお嬢さんの様だけれど、こんな山の中にいては妖魔に……」


 そう言いかけて、狐はぐっと月に近付く。


「成る程、山神の加護があるのね」


 一人納得している。 


「貴女その目はどうしたの?」


 そう言って手を伸ばす妖狐から月は反射的に後ずさった。


「おや、見えている? もしかして、邪眼の類かな」


 一瞬にして見破られ、月は身を強張らせた。


 ──油断した!


 妖狐は長命で知識量は多い。そして同時に狡猾と聞く。まだ幼い月には到底太刀打ち出来る相手では無かった。


「本当に警戒しなくて大丈夫なのに。私も山神を敵に回す気はないし、そもそも助けてくれた貴女に危害を加えることはないわ」


 そう言い切る妖狐に月は増々警戒する。しかし、妖狐の方は不穏な気配は全く感じさせない。


 ──信じても良いのかしら?


 月が考え倦ねていると、彼女は驚くべき提案をしてきた。


「──貴女、私の弟子にならない?」





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