表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第二章 紗華国妖魔奇譚の始まり
30/217

地主の依頼 其の二

「──もう少し詳しく聞かせて戴きたい」


 老師が頼むと(リン)氏は頷いて続けた。


 ──西伊州には、我が(リン)氏の他に(ヂョウ)家という豪族がおり、林氏の治める土地から小さな山を挟んだ先にある町を納めています。

 この周家には紅蘭(ホンラン)という町で一二を争う程の美しい娘がおりました。

 ある日、所要で出掛けた帰り道で紅蘭が人攫いに襲われる事件が起こったのです。しかし、偶然居合わせた我が家のその亡くなった使用人が彼女を助け、事なきを得たのです。


「ん?」と温順(ウェンジュン)の横に座っていた門弟・郭一念(ガオ・イーネン)は首を傾げた。


「その使用人は娘を助けたのに、何故拐かそうとした犯人にされたのですか?」


 一念に尋ねられ、林氏は気不味そうに俯いた。


「周家に対し、そう密告した者がいたようです」

「なんて酷い事をする奴がいるんだ!」

「これ!」


 一念は憤慨して言葉を漏らすが、老師に窘められた。目の前に座る林氏は辛そうだ。老師が一念を睨みながらも林氏尋ねた。


「林さん、貴方はその使用人は()()()()()()()()()()と仰いましたが、何故その時にその使用人を庇わなかったのですか?」

「勿論、庇っていたでしょう。ただ、私はその時所要で家を空けておりました。私が家に戻った時には、その使用人は既に帰らぬ人となっていたのです」


 林氏は膝の上で掌を固く握り締めて、絞り出す様な声で話す。その様子は酷く痛々しかった。


「──話は大体分かりました。当家から後日、この門弟達を送りましょう」


 一通り聞き終えると老師は林氏を真っ直ぐに見た。


「有難う御座います!!」


 老師の言葉に林氏ははっとして深々と頭を下げる。


「現段階で物音が聞こえる以外は被害出ていない様ですが、念の為人払いして頂く必要があります」

「分かりました。通いの者は兎も角、1週間程のお時間を頂ければ、住込みの者を皆外に移しましょう。皆、大事な使用人達ですから」


 林氏はそう言って郭家を辞して行ったのである。 




 そして、一週間後。

 郭家からはこの依頼を受ける為、年若い門弟の郭温順と郭一念が林家に向かった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ