郭家の報告書
「──話し手は貴殿が頼まれた事故代わってやれないが、我が家の門弟たちか最近妖魔討伐の依頼を受けた。その報告書を見せる事は出来る。良かったら土産話として見て行くか?」
「良いのか?」
又もや清海が珍しい申し出をしたので、驚いて見ると彼は真面目な顔で「問題ない」と頷いた。
「彼女は殆ど家から出ないと言っていた。無闇矢鱈と言いふらす人でもない。それに今回の既に噂の広がっている話だ。知られたところで何も問題ない」
「成る程」
そう納得しつつ、皓然は内心でかなり驚いていた。彼は聖人君子として有名だったが、特別親しい相手はいなかったと記憶していた為だ。その彼が深窓の令嬢と親しいという事もだが、随分と信用しているように思えたのだ。
「──随分と信用しているな。どういう関係だ?」
白楽も皓然と同様だったらしい。ニヤけ顔で清海に詰め寄った。清海はその様子に少しむっとした顔で答える。
「何を想像している? 友人だ。ただ、殆ど会う機会もない。息災か気にしていたのだ」
「本当かねぇ?」
彼の様子からして恐らく本当なのだろう。が、誂い足りない白楽はまだにやにや顔で清海に纏わり付いている。清海かが苛立ち始めているのを感じた皓然は白楽を睨みながら、彼の気が変わらないうちにと口を開いた。
「報告書、見せて貰えるか?」
「ああ、直ぐに持って来る」
彼は纏わり付く白楽をあしらいながら、部屋を出て行くと一刻もしない内に戻ってきた。手には書物を一冊持っている。それが先程言っていた門弟達の書いた報告書なのだろう。
「これだ」
「感謝する」
受け取った皓然は頁をパラパラと捲った。
そこには門弟達の筆跡で妖魔討伐を受けた経緯から討伐に至る迄の子細が事細かに記載されていた。
「──西伊州の地主からの依頼か」
「お前な!」
報告書の内容が気になったのだろう、清海に絡むのを止めた白楽が皓然が開いた頁を覗き見る。皓然は鬱陶しそうに彼を睨むが、彼は気にした様子もない。彼の相手をする時間も勿体ないので仕方無く皓然はそのまま続きを読む事にした。
「夜な夜な奇妙な音が聞こえるとの事で我が門に依頼が来た。依頼の内容からして門弟達でも対処出来ると判断して彼等を送った次第だ」
「郭家の門弟達は優秀だなぁ」
清海と白楽の会話を聞きつつ、皓然は報告書を読み進めた。