胡散臭い占術師
──寺を出立して数日の後、俊宇は都の手前の町に到着していた。
が、町に入れずにいた。理由は彼の目の前で言い争う二人の男だ。
「──おい! このインチキ占い師!」
「おいおい、失礼な事を言ってくれるなよぉ」
目の前には客らし来大柄な男と占い師らしきひょろりとした男が入口付近で言い争いをしている。
「大体占いなんて当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うだろう?」
「お前さんの占いはよく当たるっつうから俺は全財産を投じたんだぞ!」
その発言で男達の諍いの原因は俊宇にも理解出来た。男は占いを当てにし、賭け事で負けて全財産を失ったのだ。
──自業自得。
「おいおい、賭け事するのに占いを当てにしちゃあいけないよ」
「何だと!!」
占い師は真っ当な事を言っているが、客の男には火に油を注ぐ一言だったのだろう。客の男はは顔を真っ赤にして占い師に殴りかかった。
──ああ、いけない!!
俊宇は慌てて客の男の手を掴んだ。
「何だ、てめぇ! イデデデッ!!」
客の男は俊宇に凄みを利かせるが俊宇も負けていない。男の腕を捻り上げる。
「待って下さい! どんな理由があっても暴力はいけません!」
「そうだ! そうだ!」
「…………」
占い師は驚くほど素早く近くの木の影に回り込み安全圏から俊宇に同意する。流石に俊宇も呆れてしまった。
「くそっ覚えてろよ」
俊宇が手を離すと男は捨て台詞を吐いてそそくさと逃げて行った。
「いやぁ~、お兄さん助かったよ。あんがとな!」
そう言って木の影から出て来た占い師はヘラヘラと笑っている。そんな男を俊宇は半眼で見た。
「怪我がなくて良かった。ですが、貴方の占いが原因ではなかったのですか?」
「言っておくが、俺は悪くないぞ? 普段は村人相手に天気を占ってやってる善良な占い師だ! ただ、その評判を聞いたあの男が賭け事の結果を占えってやってきたんだ!」
「断れば良かったのでないですか?」
「当然断ったさ! でも、彼奴ずっとしつこくつきまとって来て仕方なかっんだよ!」
「で、適当な占い結果を伝えたと」
「いいや、俺はちゃんと俺は占ったぞ! 負けたのは彼奴が日頃の行いが悪いからだ!!」
ふんと男はそっぽを向く。俊宇はポリポリと頬をかく。占い師の話が事実なら彼に非はないようだ。
「それは、すみませんでした。それでは」
俊宇は何か納得がいかないが、一先ず疑った事を男に謝罪してその場を去ろうとした。
が、男がその後をついてくる。
「──まだ何か?」
「いやぁ~、お兄さん腕っぷし強いし、道中ご一緒出来ないかなぁ〜なんて。俺も都に行くんだが、何か最近物騒でな」
俊宇が問えば男はヘラヘラと笑身を浮かべそんな事を言う。
──断っても向かう方向は同じか……。
俊宇は半ば諦め気味に「構いませんよ」とだけ伝えた。




