創作話 其の二
こほんと1つ咳払いをして朴は話し始めた。
「──これはある宮女の話だ。
その宮女は洗濯場に配属になったのばかりだが、先輩宮女から嫌がらせを受けた。
そんな時、普段使用されていない古い洗濯場を見つけた。
その日からその宮女は仕事はその古い洗濯場を使用するようになった。
「本当に良い場所があった! これであの先輩達に洗濯物を隠される事が無くなる!」
と宮女は喜びました。
確かにその洗濯場に人気がない事を不思議には思っていたが、「宮城から距離があるせいだ!」と深く考えていなかった。何より、先輩達からの嫌がらせから逃れられる事を考えれば、宮女にとってはそれは些細な事だったのだ」
「──此処までは同じですね……問題は此処から……」
羅雨は朴の話に小さく呟く。
「──そんなある日の事。
──どんぶらこ、どんぶらこ……」
──どんぶらこ……?
「どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません。続けてください」
疑問が表情に出ていたらしい。目敏く気が付いた朴に羅雨は表情を取り繕って続きを促した。
「ああ。
宮女が洗濯場で洗濯をしていると水路から何かが流れて来るのが見えた。
──どんぶらこ、どんぶらこ……。
宮女の元へと何か丸い物が次々と流れてくる。
「何だろう?」
宮女は不思議に思い自身の近くまで流れてきたそれを見てはっと息を呑んだ。
流れてきたのは何と人間の生首だったのだ!
その生首は水路の上流から次々と流れて来ていたのだ!」
「水路の何処かに詰まりそうですね。水路に詰まった大量の生首、阿鼻叫喚の地獄絵図ですね……!」
羅雨は率直な感想を朴に告げた。感想を聞いた朴は誇らしげに胸を張る。
「そんな洗濯場に近付きたくはないだろう?」
「ええ、そうですよね。まず、洗濯物は出来ないでしょう。きっと水路の上流が処刑場にでもなっているのでしょうか? 或いは狂った医官が死体の首を落として……? 想像が膨らみます」
「何だ、狂った医官て……」
羅雨の言葉に話を作った朴の方がげんなりとした顔をしている。
「それにきっと水路には詰まらない」
朴は視線を反らしてそう言い切った。
「その心は如何に?」
「飛頭蛮だからだ」
──朴様は飛頭蛮が気に入ったのでしょうか?
朴の返答に羅雨は眉間に皺を寄せた。
「朴様、飛頭蛮は首だけで水中を移動できるのでしょうか?」
「……きっと出来るのではないか? 首だけで空を飛べるくらいなのだから……」
羅雨の純粋な問への答えは結局でなかった。二人は飛頭蛮を実際に見たことなど無いのだから当然ではあったが──。
──後日、許に二人が作った話をしたところ、速攻でボツにされたのは言うまでも無い。




