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紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第二部 皇子と仙女 第一章
185/220

奇病

「その疫病とは一体どの様に奇妙なのですか?」


 羅雨(ラ・ウ)ば不謹慎にも期待に胸を膨らませながら尋ねた。許は声を潜めて告げた。


「ある日、身体の一部に腫物ができる。それが次第に大きくなり、その腫物に()()()()()()()()()()のだ。そんな患者が数名いてね」


 (シュ)の説明を聞き、羅雨の瞳がきらりと輝いたのは言うまでも無い。羅雨は声量を抑えつつ、思い当たる言葉を声に出した。


人面瘡(じんめんそう)!」

「知っているようだね?」

「じんめん……? 何だそれは?」 


 その言葉を聞き、許はにやりと笑い、対照的にその横で(パク)は訝し気な顔をする。


「朴様、人面瘡とは、妖怪・奇病の一種の事です。体の一部などに付いた傷が化膿し、人の顔のようなものができます。驚くことにその腫物は話をしたり、物を食べたりするとされるものなのです」

「腫物が人の言葉を話すのか!?」


 羅雨の説明に朴は驚き目を見開いた。


「あくまでも書物に登場する()()()()()ですが、……許様、隔離されている方々の腫物は言は話をしたりするのですか?」


 ──本当に腫物が話し出すなら是非見てみたい!


 不謹慎だと思いながらも、羅雨は興味が抑えられず許に尋ねた。その問いに許は軽く首を左右に振った。


「見た目こそ異様だが、今のところ腫物が話をしたり、食べ物を食べたりはしていないそうだ」


 羅雨は少し残念に思いつつも、患者の事を思うと少しほっとした。実際に腫物が話し出したり、食べ物を食べ始めたりすれば大事だ。患者も周囲も気が気ではないだろう。


「もし、仮にその奇病だったら対症療法はあるのか?」


 朴は信じられないという顔をしながら羅雨に尋ねた。


「人面瘡に薬あるいは毒を食べさせると療治するとされています」

「そうか」


 対処法があると聞き、朴はほっと息をついた。


「羅雨殿は流石、物知りだね。まあ、医官殿も本気で人面瘡だとは思っていないよ。書物に出てくる人面瘡に似ている、という程度だ。奇病には違い無いと思っているようだけれど」

「成る程医官様は人面瘡をご存知なのですね。医官様その病気については何と?」

「人面瘡はあくまでも架空の病気。何かしら原因はあるはずだと治療法を探している」


 そこで一旦許は言葉を切った。


「それで私は何をすれば良いのですか?」


 羅雨は思い切って本題を尋ねた。許はこの様な機密事項を誰彼構わず話す人ではない。話したのは羅雨に何かしらをさせたいからだ。


「君は奇々怪々を求めて他方を回っているだろう? 何かしら似たような出来事や話は聞かなかったか教えて欲しい。それと君の実家は渡来品も扱っていただろう? 書物や薬を内々で仕入れて欲しいのさ」

「畏まりました」


羅雨は恭しく頭を下げた。





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