真面目な武官
「どうぞ」と朴武官にお茶を勧めながら羅雨は彼の目の前に座った。
「──で、どんな女なのだ?」
話を急かす朴に向かい羅雨は神妙な顔で答えた。
「朴様、申し訳ありません。彼女は未亡人でして、朴様の見合い相手には些か不向きかと……」
数秒の間の後、朴の怒号が書庫内に響いた。
「──巫山戯るな! 私がそんな事の為に態々お前を訪ねて来たと思っているのか?!」
「え? 違ったのですか? 私はてっきり……」
朴の怒号に何事かと他の官吏たちがわらわらと集まって来るが、朴と羅雨の姿を見ると「ああ、またか」と言って去って行った。
「何処からそんな発想が出てくるのだ!?」
羅雨は眉を八の字にして困った様な顔をする。
「実は朴様のご両親が当店にいらした時、朴様と気の合いそうな良い方はいないかお尋ねになったものですから……」
「なっ、父上と母上が一緒にか!?」
予想外だったのか、朴は目を丸くした。
「いえいえ、それぞれ別々にいらっしゃいましたよ。ただ同じ事をお尋ねになるなんて、余程仲がよろしいのか、それ程頭を悩ませているのか……」
憂いを滲ませる羅雨の言葉に朴は「ゔっ」と言葉を詰まらせた。しかし、すぐに当初の目的を思い出したのか羅雨を睨みつける。
「私はお前が妙な女を連れてきたのではないかと聞いているのだ!」
朴は顔を真っ赤にさせながら、羅雨に詰め寄る。羅雨は今やっと分かったと言う風に「ああ、成る程!」と手を叩いた。
──最初から分かってはいましたが。流石に誤魔化せませんねぇ。
そう羅雨は内心で嘯いた。
「まあ、彼女の素性は私も分かりません。しかし、両親が店で働く許可を出したのです。問題ないでしょう」
「お前な」
呆れる朴の後ろで、くすくすと笑う声がした。羅雨が視線をそちらに向ければ、高貴な雰囲気の青年が立っている。
彼も高級文官でよく朴とつるんでいる。
「まあ、羅殿。そう朴を虐めてくれるな」
「おや、許様ではありませんか。お久しぶりです」
「虐められていません!」
一人憤慨する朴を尻目に羅雨は許に椅子を勧めた。




