皇子と仙女
紗華国時代の神話は数あれどその中でも『皇子と仙女』の話は有名である。
何せこの話に登場する皇子は紗華国の歴代の皇帝の中でも賢王と有名な13代皇帝なのである。そんな彼の人生は波乱万丈で、特に幼少期は不遇の時代を過ごした。その経緯もあって、彼の話は芝居の題材となり、彼方此方で公演され知らぬものがいないほど有名な話となっている。
『皇子と仙女』は紗華国の13代皇帝に纏わる神話の序章なのである──。
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13代皇帝が誕生したのは戦乱起きる直前であった。この戦乱を期に政権交代を目論んだ者達に幼い彼は生命を狙われた。彼の生命を案じた母皇后は乳母に命じて彼を宮中からは共に逃げ出した。
そこで乳母が逃げ込んだ場所のはなんと妖魔奇怪が跋扈するという山。
──何故この乳母は幼い皇子を連れてそんな場所に逃げ込んだのか?
この理由については複数逸話がある。その中でも最も有力な話は乳母が信心深い人物であったという話だ。
実は当時、この妖魔跋扈する山の奥深くには聖域があり、子供を加護する神が住んでいるとまことしやかに囁かれていた。
──どうか皇子だけは……。
信心深く、忠義に厚い乳母は妖魔奇怪が跋扈する山の中に決死の思いで逃げ込んだのだろうと人々は語る。
だが、当然ながら乳母は只人。呆気なく妖魔に食い殺さてしまい、幼い皇子は一人山中に取り残された。
皇子が山の中で彼が泣いていると乳母の思いが通じたのか、何処からともなく一人の女人が現れた。
女人は妖仙──妖魔の仙人──であり、鬼火(この山中で無念な死を迎えた亡霊)を纏っていたという。その姿は迦楼羅炎を纏う不動明王の様であった。
彼女は妖魔跋扈する山の中一人泣いている皇子を不憫に思ったのか、彼を拾い上げると神域へと連れ帰った──。
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──ここ迄が『皇子と仙女』の序盤である。
その後、皇子はこの妖仙のもとで修行をし、数年を経て当時国を混乱に陥れていた狐の大妖を退治すると皇帝への座へと返り咲いたのだ。




