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紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第六章 紗華の大禍の真相
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形代

「──それで梁明鈴(リャン・メイリン)は呪いの匣を手に入れたということですね!」

「ああ、そうだ!」


 羅雨(ラ・ウ)が瞳を輝かせて興奮気味に言うと目の前の少女も自慢気に頷いた。


「しかし、これが(ホワン)家の反乱よりも前の話であるなら、もしや黄家の反乱は仕組まれたものだったのですか?」


 時が時なら恐ろしい質問であるが、これは1000年以上前の話だ。羅雨は躊躇なく目の前の少女に疑問をぶつけた。


「さぁ、それは知らんの。まあ、黄家の当主の性格を考えれば、元々好機があれば何かしら仕掛けていたであろうな。黄家が反旗を翻した時、誰も疑問に思わなんだ事が良い証拠じゃろ?」


 少女はのらりくらりと交わしてくる。


 ──さて、匣を手に入れたから運命がそう動いたのか、それよりも前から運命の歯車は廻っていたのか……。これはどう取るべきなのか?


 羅雨は思考わ巡らしたが答えは出ない。代わりに別の疑問が湧いた。


「梁明鈴が匣を手に入れた時、怨霊を祓ってはいなかったのでしょう? 匣もそのままだった。声真似の言うように別の何かに移し替える事しなかったのですか?」

「いいや、移し替えた。匣はただの文字通りの匣になった」

「では、何に?」

「胎児の遺骸だ」


 羅雨は目を見開いた。梁明鈴は呪詛師の行動を嫌悪していたというのに。その当人が同様の行動をするとは思えなかったのだ。


「胎児の遺骸に怨霊を封じ込めたのさ。人の所業とは思えぬか?」

「理由は、分かります。人の魂を宿すなら人形が一番有効ですから」


 何故、形代や依代が人の形をしているか。以前、とある僧侶が教えてくれた。それは最も霊を宿しやすい形だからである。だから、声真似の霊魂も人形に移す事が出来た。

 ただ、それと許容出来るかは別の話である。


「まあ、あれ程の怨霊を移せるものなどあの場には無かったからな」

「え?」

「永年、怨霊の気に晒され続けて来たものだ。あれ自体が呪具に変化していてもおかしくない。でなければ、とっくの昔に朽ちていただろうよ」


 少女は陽気に言った。


「──そう言えば、この話は貴女の正体の話ですよね?」

「おや、なんだ。忘れていなかったのか?」

「忘れていたら、話さないつもりだったのですか?」


 少女は態とらしく残念そうに言った。対する羅雨は眉間に皺を寄せ不機嫌そうな表情を作る。


「まぁ、聞け。次の話でこの話は終わりだ。さすれば、私の正体も分かるさ」


 そう言って、彼女は不敵に笑った。




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