捜索
その後明鈴は羅秀の力を借りて彼の一族の遺骸が入った籠を密かに探した。しかしながら、籠に関する情報は剣の霊の持つ記憶のみ。それが何処にあったのか、何処に行ったのか全く検討がつかず難航していた。
「──それらしいものの話は収集していますが、呪物に関して知識のない私では何とも……」
「私も李師匠について学んでは居るけど、強力な呪詛の話はなかなか教えて貰えないわ。下手に探りを入れて怪しまれても困るし」
明鈴と羅秀は嘆息する。この時探し始めて既に数年経っており、二人は13歳になっていた。
「協力するのは構いませんが、何故ご両親や李先生にも秘密にするのです? 先生達の方がより早く見つけられるのでは?」
「それは……」と明鈴は気不味そうな顔をする。
「黒炎鬼は『お前の命尽きるまでに見つけ出せ』と言ったの」
「ええ、覚えています」
羅秀は頷く。その話は明鈴自身から羅秀は聞いていた。
「それまでの間、あの剣は私に力を貸すと言ったの。でも、その後はどうなると思う?」
羅秀は「ああ」と納得した。何となく言いたいことが察せられたからだ。
「目的を果たした後、貴女に力を貸す利点などあの剣には無い。阿月は貴女自身が力をつけるまであの剣を手中に収めて置きたいって事ですね」
「半分正解」
「半分?」
羅秀は首を傾げた。
「あの剣があれほどの邪悪な剣になったのは、主の激しい怨念のせい。その剣が浄化出来なかった呪物なんて、どんな代物か分からない」
「ちょっと! そんな危険なものを私に探させてるのですか!?」
羅秀は態とらしく驚愕の表情を浮かべると、明鈴はじとっとした目で彼を見る。
「分かっていたくせに。両親や師匠はそんな危険なもの見つけたらきっと私から遠ざけるでしょ? 今だって、私だけでも妖魔は狩れるのに私の代わりに剣に捧げる妖魔を狩ってくるじゃない」
そう言って明鈴は少し拗ねた様な顔をした。この時既に明鈴は一人で妖魔を討伐出来る程の実力を付けていたのだが、彼女の目の前に座る羅秀は武芸に疎く、目の前の同年代の少女の実力など実際のところよく分からなかった。
「私が、阿月の両親や師匠に言うとは思わないのですか」
羅秀がずっと疑問に思っていた事を尋ねると「思わない」と彼女からはきっぱりとした答えが返って来た。
「何故です?」
「商人にとって一番大事なものは信用なのでしょう? なら阿秀は絶対に言わないでしょ」
その答えに羅秀は満足げに笑った。
──その後も二人だけで情報を収集しながら密かに捜索を続けていたが、籠の行方だけでなく何年も手がかりは見つからなかった。
しかし、その籠は思いも依らぬところから見つかった。




