少女の正体 其の二
暫くの沈黙の後、少女ははぁと一つ息をついた。
「流石、主の見込んだ男だな。用心しておったが、そんなに分かりやすかったか?」
少女は軽く項垂れた。そこには怒りはなく、どちらかといえば呆れが滲んでいた。
「いいえ。単純に貴女が何故そんなに丹という男を嫌っているのかと考えていたら、その答えに行き着きました」
羅雨はそう答える一方で、しかしと考える。
──一体何時彼女の主とやらに見込まれたのだろうか。
疑問に思うも、羅雨は各地を放浪して奇々怪々を探している身だ。何処かでこの妖魔の主に見込まれていても、不思議ではない……のかもしれない。
──ならば、何故私の前に姿を現してくれないのです! いや、既にお会いしているのかもしれないが!! 私とした事が気が付かなかったなんて!!!
羅雨は平静を装いながら内心激しく悶えていた。
──一体、何時、何処で!!!?
「……………」
羅雨の内心の荒ぶりが伝わったのか、目の前の少女には何とも言えない顔をされた。若干引いている。
「……まぁ、そういう事だ。故にお前が多少粗相をしたからといって危害は加えぬ。内心では気にしておったろう?」
ごほんと一つ咳払いをした少女はそう告げる。少女の言葉に羅雨は呆気に取られてしまった。この妖魔の少女が羅雨を気に掛ける言葉を口にしたからだ。
「さて、次にお前が所望するのは私の話だな。あまり気持ちの良い話ではない。本当に聞きたいか?」
少女に問われ羅雨は頭を縦にぶんぶんと振った。それこそ羅雨にとっては今更だ。妖魔奇怪の話が気持ちの良いものばかりではないのは羅雨も十二分に理解している。
それは妖魔の成り立ちに起因するだろう。長い年月を経て怨念や憎悪がものに宿り妖魔となる。そこには怨念や憎悪の元となる出来事があるのだ。 怨念の元となる話が気持ちの良いものではないのは当然だろう。
しかし、怨念から生まれた存在が羅雨の様な非力な人間を気に掛ける優しさを持っている事に羅雨は激しく感動してしまった。
「お心遣い感謝致します」
そう素直に告げ、少女の顔を見ると何故だか凄く微妙な顔をしていた。今の会話に引かれる要素はなかった筈と羅雨が首を傾げていると少女は気を取り直し口を開いた。
「さて、私の正体について話してやろう」
少女の声に続き、銅鑼の音がドドンと響いた。




