考察 其の三
──紗華の大禍、その正体は梁明月である。
当初、羅雨はそう仮定していた。しかし、梁明月は話の半ばで既に亡くなったことで、この仮説は排除した。
勿論、梁明月が生きていたり、怨霊になっていたならば話は別だが、梁明月は死んでいると少女は言った。その時点で、梁明月が生きているという仮説はなくなり、また、怨霊になったというならば、梁明月もとい無月が死んだ時点から異変が始まる筈であるが、その事には言及されておらず、その後の話にも無月は登場しなかった為、この仮説も排除した。
「梁明月は死に、別人が梁明月となった」
──そもそも死んだ筈の梁明月が存在する理由はなんなのか? その理由としては梁明月という存在が必要だったからではないか?
この推測は恐らく間違い無いだろう。紗華国における梁家の明月という存在ははそれなりに高い地位にいた。何かを成したいものにとってその地位は重要だった筈だ。
梁明月に成り代わった人物として考えられるのは、無月の兄貴分であった朱剴である。彼もまた無月が死んだ後の話には登場していない。
この中で、梁明月に成り代わるのに最適な者は彼の外いないだろう。
但し、朱剴であったならば、奇妙な点もある。
──彼は小柄であったろうか?
梁明月は男性にしては小柄と表現されている。
朱剴はその当時既に成人していて、身長が大きく変わるはずもない。その彼に対して小柄という表現は使われなかった。
──では、梁明月に成り代わったの誰なのか?
無月という少年と同時期に登場してそれ以降登場していない登場人物ではないだろうかと羅雨は推測した。
──孫子峰……は大男だからそもそも違うし、李宇軒であっても彼は元々黄家にいたのだから声でバレるんだじゃないか? 他はあの見世物小屋の人買いから救出された子供達がいるが、幼い子供が経った数年で功績を納められるのか?
羅雨は頭をフル回転させて登場人物を思い出す。だが、朱剴以外には適当な人物を思い出す事は出来なかった。
──あとは梁明鈴の養父母に、使用人の梅残っているのは女性陣だけか……。
そこでふと羅雨はある事を思い出した。
──紗華の大禍が出現する前に何があった?
黄家から3000人の兵士が梁家に向かった。しかし、その兵士たちは忽然と消えたのだ。
そこには梁明月と彼の部下もいた。そしてもう一人消えた人物がいたではないか。
すとんと腑に落ちた気がした。




