考察 其の二
「──死んでいる」
その答えに羅雨はほっと息を付いた。これで幾つかの可能性は消すことができる。
きっと誰がこの話を聞いても不思議に思った事だろう。
──何故、死人が再び現れるのか。
梁明月もとい無月が死んでから時間が空いているし書き手も違う。その為、死んだと見せかけて実は……という可能性は十分にあり得た。
だが、今の問いで無月が死んだという事実は確定した。ならば、後に現れた梁明月は別人という事になる。
ただし、目の前の少女が嘘をついていなければであるが。
──まぁ、私に嘘をついても何にもならないのだけど。
彼女がどう認識しているかわらかないが羅雨という人間は好奇心は人を殺すを実行出来る人間である。
少なくとも、この宿の管理人である林辰にはその様に映っていただろう。だから、彼は羅雨にその危うさを再認識させ、書庫に取っ掛かりががある様な物言いをした。
彼が嘘をついているとは思わない。
何故なら、彼が羅雨を害したいなら、態々彼に彼自身の危うさを再認識させる必要などなく、彼の好奇心の向うままに行動させれば良いからだ。
──林辰は、この少女の目的は何だろう?
羅雨はその考えは直ぐにどうでも良くなった。
実のところ、羅雨にとっては彼等が自身を害したとしても、それはそれで本望だったからだ。
──せめて人ならざる姿は見せてもらいたいものだ。
きっとその考えを彼の家族が聞いたら嘆くだろう。彼の家族中は非常に良い。きっと理想的な家族というものにぴったりと当てはまったであったろう。
そんな家族をもちながら、不謹慎な事を思う事に申し訳無さを感じつつも事の成り行きに任せたいと願ってしまう。
──私は奇々怪々に魅入られている。
林辰の言った事は的を射ている。
羅雨は顔を上げた。目の前には少女が座っている。怖気の走るような気配は、今は鳴りをひそめていた。
少女はひどく珍妙な生き物を見るような目で羅雨を見下ろしていた。
「もう謎解きは出来たかね? それとも降参か?」
少女の問に羅雨は笑って答えた。
「いいえ、まだまだです」




