捜索 其の二
──見張りの数は三人……。
孫紫苑は頭がはっきりとしてくるとまず周囲の様子を観察した。紫苑同様に連れてこられた者は使用人か多く最低限の食糧しか与えられていないのか衰弱している様だった。
──一体どういう基準で連れて来られたのかしら?
そう考え、捕らえられた人々を観察していると、ふとある事に気が付いた。
もしも誘拐犯が梁家の内部情報を知るために此処にいる使用人たちを誘拐しているなら大した情報を得られなかっただろう。
何故ならば、誰も彼もが微妙に的を外しているからだ。
例えば一番奥の牢にいる男は厩番をしている男だが、彼が管理している馬は若い門下生たちのものだ。
もし、梁家の幹部の誰が何時外出したのかを知る為に連れ去ったというならば、若い門下生の厩番ではなく、幹部の乗る馬を管理している厩番を拐えば良かったのだ。
他のものも同様で、中にはただ年格好のよく似たものまでいる。
標的だったと思われる人物同士に共通点は少なく、彼等が立て続けに失踪したとしても誘拐されたと気がつくまで時間がかかっただろう。また、誘拐目的や次に誰が狙われるかまで予想し辛いだろう。
──目の付け所は悪くないから、指示役の頭は悪くない筈。実行役に問題でもあったのかしら? よくもまあ此処まで上手く外したものね。
自分も含め,拐われた人達は運が悪かったとしか言いようがない。
──違和感だらけだけど、実行役が間抜けって線が当たって欲しいわ。これなら、逃げ出す機会もあるかもしれないから。
紫苑は考察する事で生まれた僅かな希望に一縷の望みを掛ける事にした。
──まずは拘束を解くことからね。
紫苑は身を捩って壁際まで行くと、気付かれない様に縄を壁に擦り付けた。
縄は思っていた程きつくは結ばれておらず、また傷んでいたのか何度か擦っていると簡単に解けてしまった。
──一体、何処の家なの? こんなに杜撰で何考えているのかしら。
油断してしまったせいだろう。紫苑は誤ってそばに立てかけてあった棒切を倒してしまった。
「何の音だ?」
「あっちの牢からだ!」
音に気がついたは見張り番が近付いて来た。
──拙い!!
紫苑は身を強張らせた。
──ガシャン!
別の場所から大きな音が響いた。
「何だ!?」
「向こうからだ!」
「まさか侵入者が!?」
見張り番の注意が紫苑から別の場所に向かう。その直後「ギャッ!」という短い悲鳴が聞こえた。




