捜索 其の一
「──さて、探すって言っても何処から手をつけるべきかなぁ?」
「心当たりはないのか?」
両手を頭の後ろに当ててボヤく李白楽に郭清海が尋ねた。何考えがあると思っていたらしい彼に、白楽は顰めっ面をした。
「あるわけ無いだろう?」
「君はそういうのを考えるのは得意だと思っていたが……」
至極真顔な顔でそう言われ、白楽は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
──確かに純粋培養のお坊ちゃんよりは得意だろうさ!
「君なら連れ去った人達を何処に隠す?」
「俺なら?」
異論を呈そうと口を開こうとした彼だったが、直ぐに別の問をされたため、その気持ちは別の場所に追いやって直ぐに思考に専念する。
「……そうだな。俺が犯人なら自分は簡単に入れても他の人は入れない場所とかかな」
「例えば?」
「例えば……」
そう言いかけて白楽は言葉を止めた。視線だけで清海に合図する。清海も気が付いたらしい。白楽は息を軽く吸い込んだ。
「そうだな!」
そう言うが早いか、二人揃ってぐるりと体を回転し後ろを振り返る。二人は彼等を尾行していただろう人影の姿を捕らえた。
しかし、相手は逃げ足が速いのかあっという間に彼等から遠ざかっていく。二人は急いでその人影を追った。
「くそっ、逃がすか!」
白楽ははしりながら悪態をつく。二人と人影の距離は思う様に縮まない。それどころか、黄家の屋敷からかなり離れた場所でその人影の姿を見失ってしまった。
「逃がしたか?」
荒い息を整えながら、白楽と清海は顔を見合わせた。
「あの人影、何処かに隠れたのかも。俺達と彼奴の距離は縮まっていなかった。急に消えるのおかしい」
「この周辺を探ろう」
二人は頷き合うと周辺を探った。辺りは草木が繁った場所で黄家の屋敷が遠くに見えている為、辛うじてまだ黄家の敷地内である事は分かった。しかし、此処が屋敷からどの辺りなのかは二人には見当がつかなかった。
──ガサガサッ
周辺を探していると草を掻き分ける音が聞こえた。その音は微かで注意深く聞いていないと聞き漏らしてしまいそうだった。
白楽が慎重に音がした周辺を探る。
「!」
白楽は勢いよく清海の方向を振り返った。清海を手招きして呼ぶと一つの場所を指で指し示した。彼が指し示した場所は一見するとただ草や木が生い茂っているように見えた、しかし、少しその草木を掻き分けるとそこには人一人は余裕で通れる穴がぽっかりと開いていた。
「見つけた」
どちらとも無く呟いた。




