八名家招集 其の一
「──何で俺をそんな目で見る??」
馬車に揺られながら、李白楽は自身を睨みつける皓然に不服そうな顔をする。
「睨んでなどいない。最初からこんな目つきだ」
「嘘つくなよ」
それに対して皓然は憮然とした表情をしている。
何時もなら白楽の頭を一発ぐらい叩いているところだが、窓の外、もう二台の馬車を考えるとそんな気も失せた。
「何故こんな事になる?」
皓然は白楽を見ずに呟いた。殆ど独り言に近かったが、狭い馬車の中ではしっかりと白楽聞こえたらしい。白楽は顰めっ面を作って抗議する。
「俺のせいじゃない!」
「お前が梁家を探れって言ったんだろう?」
「だからってこんな事になるとは思わなかったよ」
「なら、何で郭清海までいたんだ!?」
実は先程白楽が現れた時、彼の後ろには更に郭清海の姿があったのだ。そして、皓然と白楽が乗る馬車の後ろの馬車に郭清海が乗っているのだ。
「偶々だ! 彼奴が勝手についてきたんだ!」
彼は悲痛な面持ちで訴える。
確かに元々は郭当主から調査を依頼を受けた事がきっかけで、白楽は梁家に探りを入れようとしたのだ。
郭清海も白楽と同様の考えを持ってもおかしくはない。
だが、八名家の内三家が一箇所にいる時に人攫いが起きるなど偶然にしても出来すぎている。違和感を持つなという方が難しいだろう。
皓然は前を走る馬車を窓から覗いた。その馬車には梁篤実と梁明鈴が乗っている。
「皓然、明鈴嬢が気になるのか?」
白楽は皓然の顔色を伺いながら尋ねた。
「気にならない方が変だろう?」
皓然は片眉を上げる。篤実はともかくとして何故、彼の一従兄妹に過ぎない彼女が馬車に乗り、八名家当主の集う場所に向かっているのか理解出来なかった。
──彼女を連れて行って一体何をするつもりだ?
当主に付き従うならば、彼女よりも明月の方が適任なのは誰が見ても明らかなら事だ。だというのに肝心の彼の姿はない。
「なぁ、梁明月は何処に行ったんだ?」
「何故俺には聞くんだ?」
「直前迄は一緒にいたんだろう? 俺は彼に会っていない」
「篤実は別の仕事があるとか言っていたが」
「こんな時に? 何をしているんだ?」
「俺が知るわけないだろう」
怪訝そうな白楽に同意はできるものの皓然もそう返すしかなかった。
そんな事を言い合っているうちに馬車は黄家の領を跨いでいた。




