付喪神 其の四
──一ヶ月後
呪符を全て回収した事で、陳梓晴は体調も回復し予定通り婚礼を挙げられる様になった。
「──また来て頂いて申し訳ありません」
「いえ、お構いなく」
梓晴の体調は回復したものの、犯人はまだ分かっておらず、また同じ様な事が起こるのではと陳氏は恐れていた。
しかし、この一ヶ月間悪夢に魘される事も事故に遭うこともなく無事に過ごせていた。
「諦めをつけて下さっていれば良いのですが……」
紅い婚礼衣装に身を包んだ陳梓晴は不安そうな様子を見せる。
「婚儀の最中に万が一何かあっても我々がお守りします。どうかご安心を」
郭凌が清海の代わりに告げると彼女は表情を緩めたが、その瞳にはまだ不安が残っている。
──嵐の前の静けさでなければ良いが。
そう郭凌も言いしれぬ不安を抱えていた。しかし梓晴の手前それは表には出さず、他の弟子達とともに婚礼の隊列に混ざった。
幸い郭凌の不安もよそに婚儀は恙無く行われた。
──良かった。何も起きなかった。
婚儀も終盤に差し掛かり、郭凌がほっと一息ついた時である。羅家の門前まで辿り着いた花嫁の乗る輿の側を不吉な風が一陣彼等の側を通り過ぎた。
「皆止まれ!」
直ぐに気が付いた郭凌が声を掛けると皆その場に止まり、郭家の周囲を警戒する。
今まさに潜ろうとしていた門扉はガタガタと揺れている。
「何が起きているのですか?!」
驚いた梓晴が輿から顔を覗かせた。
「出てきてはなりません!」
慌てて郭凌が叫ぶと、梓晴は顔を引っ込めた。しかし、それでは遅かったらしい。
再び一陣の風が吹き輿は大きく揺れた。
持ち手達はガタガタと揺れる輿に振り回される。今にも花嫁が乗ったままの輿を落としそうになった。中では梓晴が悲鳴を上げた。
「陳お嬢様!!」
使用人達は驚き慌てる。
──何処だ!
郭凌は必死で怪異を起こすものの正体を探った。その間に輿の揺れは激しくなり、梓晴はそこから放り出された。
『──見つけた』
怪異の主であろう。声と共に恐ろしい声と共に般若の顔をした女の巨大な頭が梓晴を目掛けて飛んでいくのが見えた。
「梓晴お嬢様!」
放り出された梓晴はその頭から逃げられず、その場に蹲っている。
巨大な般若の顔は大口を開けて梓晴に噛みついた。
「きゃあああ!!」
梓晴の悲鳴に郭凌は目の前が真っ暗になった。




