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紗華国妖魔奇譚  作者: 空色
第五章 紗華の大禍の誕生・後編
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八名家の七不思議 其の三

「──梁明月(リャン・ミンユエ)の弱点が知りたい?」

「ええ、そうなんですよ!」


 勢いの良い白楽(バイリー)に訝し気な、というより困惑した顔の(リュウ)大将軍を前に皓然(ハオラン)は恥ずかしさで一杯になり、今直ぐ此処から立ち去りたかった。だが、何をするか分からない白楽を置いて帰る訳にもいかず、皓然は羞恥心と闘っていた。

 明鈴の文があるからどうにか邪険にされずに済んでいるようなものである。


「文は見たが、弱点なんぞ知ろうとせんでも明月の顔が見たいというなら普通に頼めば良いのではないか?」


 至極真っ当な事を言われ、皓然は顔を俯かせる。成人前の子供ならまだしも七不思議で盛り上るなどいい大人二人が何をやっているんだという話である。


「何故、明月殿は常に仮面をしているのですか?」


 ──そもそも悪趣味な仮面などつけているから八名家の七不思議なんて不名誉なものに加わえられるのだ。


 とそんな思いで尋ねると劉は暫し思案したものの「ふむ、文もあることだし良いか」と言って話し始めた。


「明月が元々偵察部隊に所属していたのは知っているか?」

「いえ、(ガオ)当主からは後方支援をしていたと伺いましたが」


 そう言えば、劉は静かに頷いた。


「それも事実だ。確かに一時期我が部隊の後方支援を任せた事もある」


 劉の話によると明月は成人後偵察部隊に所属していらしい。しかし、偵察部隊という特殊な環境であった為、彼が梁家の子息であるというのはあまり知られていなかったそうだ。

 しかし、妖魔退治に出掛けた際、劉大将軍が指揮を取れなくなる程の深手を負った。その際に隊を指揮して部隊を纏めたのが、梁明月であった。そして指揮官としての腕を買われ、その後の活躍により将軍にまで登りつめたのだとか。


「それと仮面とどういう関係があるのですか?」


 皓然も白楽も聞いた事のある話を聞かされ首を傾げていたが、直ぐに白楽の方は理由に思い至ったらしい。


「明月将軍は今も偵察部隊の任務をされているのですね?」


 白楽の問に劉は頷いた。


「本人曰く多少悪目立ちしたとしても顔が割れるより仮面をしていた方が良いとの事だ。彼の直属の偵察部隊の者も皆仮面をしているぞ。傍から見ればかなり異様だがな」


 そう言って劉は苦笑いを浮かべた。


「でも、何故良家の子息でもある明月が目立たない部隊への配属されたんですか? 明月将軍程の実力があれば他の隊への入隊も出来た筈です」

「明月は幼少期病弱で彼の素顔を知る者も少なく、それ故に偵察部隊が適任と判断され配属となったらしい。本人の意向もあるが」

「本人の意向?」


 皓然と白楽は目を丸くした。名家なり何処かしらの門下に属している者は皆大業を成し得る事を目標としている。良家の子息ともなれば尚更だ。

 より武勲を立てられる場所を望むだろう。


「出世欲がないのかもしれんな」


 と劉は悩ましげにボヤいていた。


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