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弱々でごめんなさい~現代ダンジョン物語  作者: 炉里 邪那胃(ろり じゃない)
第一章
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ゆるゆる

 緩い、ゆるゆるだ。

 討伐隊は。


 いや、そもそも大昔に見た自衛隊ドキュメントの記憶があったから。

 林教官が自衛隊口調を引きずっていたのもある。

 だがここは普通だった。


 ステータス出現を検知されたり自ら出頭したりすれば、規定で少なくとも3日間は基地で訓練や観察を受けなければならない。

 本人の仕事の引き継ぎがあれば延長される事もある。


 最初はどうなるかと思ったが……

 訓練だけ時間に遅れず真面目にやれば良いようだ。

 早朝に起こされたりすることもなかった。


 これで普通の出勤時間なら、会社員に毛の生えたようなものだろう。

 ランクが上がれば変わるのかもしれないが、多分待遇もいいはず。

 特に給料とか。




 3日間は特別なので一人だけの家、というか小さな宿舎だ。


 まず準備、制服を着る。

 改めて討伐隊員になったという気分。

 強制だったけど、やっと自分の場所に来た気がする。


 名前や階級のタグを首にぶらさげているが、引っかかると危ないので上着に入れる。

 ”F”の肩章が縫い付けてある、Fランクの証。

 自分で考えててちょっと(むな)しい。



 集合。

 ちょうど10人のグループのラスト一人だ。

 付近に他に隊員は見当たらない。


 おそらく、全員新人かそれに近い人達か。

 初めて他の隊員と会う、後で声を掛けてみよう。



 ちらちら視線を感じる。

 担当の林教官のよう、何度もだ。

 鑑定っぽい。


 自分のステ、特に物理面が低すぎるのは分かってる。

 そのうち言われるだろう。

 でもそんなに何度も見なくても。



 制式の剣と同サイズの木剣をひたすら振る練習。

 正面への振り下ろしのみ。

 僕に合わせているのだろう。


 休憩してまた繰り返す。

『剣筋』と何度も言われる。

 とにかくまっすぐ振れということらしいが出来ているのか分からない。

 繰り返すしか無い。



 基本の振り練習数種で時間は過ぎていく。

 全員僕に合わせて基本からやっているっぽい。


 申し訳なくて昼食中もずっと無言になってしまう。







 そうして時間は刻々と進み、そろそろ終わりっぽい。


「剣関係のスキルが無い者は……8人、ほとんどだな。

 整列だ、それ以外は見学」


 一人づつ教官に打ち込めと言う。

 突いてもいい。

 一歩でも動かせなければ全員練習場50周。

 訓練っぽいのが来たが、就業時間は……。

 まあ計算してくれてるはずか。

 残業代は出るのかな。


 結果は分かってる。

 精神鍛錬?



 並んで順に突っ込むが教官は木剣を払いもせず受けている。

 おそらくステータスが違いすぎる。


「5回目、ラストだ!」


 運動なんて学生以来。

 50周はきつい。


 くそっ、いやだ。



 突っ込む、全力で!


 教官が目の前から消えた?


 数メートル先に倒れて腹を抑えている。

 狙いなんて付けていなかった。

 当たったのが腹で良かった。


 教官は咳き込んでいるが平気っぽい?


「大丈夫ですか!?」

「平気だ、よくやったな。ちょっとそこに居ろ」



 ムクリと起きた大きな体がずんずん近づく。

 褒めてくれたはずなのに何をするんだろう。


「【突き】が生えてるな。剣技の下位スキルだ。

 おかしなタイミングだが……まあいい。

 ……よくやった」


 自分で確認する。



   レベル : 1

   体力 : 7/7

   魔力 : 11/11

   強さ :7

   丈夫さ :7

   知力 :11

   器用さ :11

   敏捷 :10

   運 : 77

  スキル :

   【突き】(新)

  称号 :

   ラッキーパンチ、キリ番



 スキルの他は全く変化なしだった。


 嬉しい、というか興奮してしまい、メンバーに声掛けできないまま宿舎に帰ってしまった。



 ~~~~~~



「Aランクお得意のデスクワークか」

「ん、なんかあった? 終わったばかりでわざわざ来るって」


 慣れすぎてしまった林のイジりは無視して北村が答える。

 デスクワークができるのは平和な証拠だ。



「例のキリ番、スキルが生えた。

【突き】だけだが、動作中にだ。どう思う?」


 林は状況を説明する。


「危機系はちょっと弱いし、願望系の取得かな?」

「50周ランニング回避、ラスト1回か、なるほど。

 ……それにしては簡単過ぎないか?」


「称号の効果の候補としては十分ね。

 分からなければ延長延長再延長かもね」


「ステが弱々なのにそれは(むご)すぎるな。

 そうならなければいいが……」

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