念話
※前回あとがきに「現在ステータス」を追加しています。
朝だ。
ダンジョンへ到着。
そういえば試したいことがあった。
ダンジョン内では驚かせて事故につながるかもしれない。
やるなら朝のうちだ。
(おーい!)
使ったのは【念話】だ。
みんなが一瞬止まったような。
わかり易いのは耳をほじったヤスだ。
どんな風に聞こえたのかはわからない。
音として認識されて無いかも。
最悪片道でも、なにかに使えればと思ったが無理だった。
(ヨウね、今の)
うわっビックリした!
いや多分僕の方もビックリさせてるはず。
(うん、突然ごめん)
声の主、ユイさんがこちらを見ていた。
彼女も何回か試したが、ダメだったそう。
やっと現れた念話の通じる相手が僕だったわけだ。
特に今話すことを思いつかない……。
これは伝わってないよね。
なるほど、言語化して相手に伝える意志がないと伝わらないよう。
(じゃあ、また何かあったら)
嬉しさとか色々な感情を隠しつつ、返しておく。
(うん、またね)
ふと見ると、見つめ合っている僕とユイさんをひらタンがジト目で見ていた。
あっ、唯我さん登場。
「中では素っ気無くなってしまうので、先に言おうと思いまして」
「はい、なんでしょう?」
まさかここで例の話じゃないはず。
「今は研修扱いになっていますが。
もうしばらく、と言うより6人目のメンバーになってもらえませんか?
手続きはしておきますから。
可能な限りやってみますので」
願ってもない事だった。
ユイさんと居たいという不純な動機は少ししか無い。
少しだ。
本当だ。
戦いでは今は見ているだけだが、オーガの対処ができれば。
越えられない壁ではないと思いたい。
そして、10階層。
オーガは2匹以上で出ないのか、出るとしたらどう対処するんだろう。
その話はまだ聞いていないが。
【加速】に頼られるのは……構わない、それしか出来ない。
それが僕の最高の能力だ。
他所に行けば、余程の事がなければ使えなくなるだろう。
ここだから使える、そんな気がする。
「もちろんお願いします。
やってみたいことが数え切れないほどありますし」
横でユイさんもホッとしているような。
そりゃ、せっかく念話の相手が見つかったんだからな。
ダンジョンへ向かう。
指示を受け、ゴブリンでは先頭に立って斬り、走る。
「こりゃリーダーに追いつくのも時間の問題かもしれねぇ」
ヤスが軽口を叩く。
やっとここまで来たな、と自分で思う。
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