隠しごと
人差し指を立てて『シー』と、村林さん……ユイさん姉妹にも見せる。
意味が分かっているかはともかく、2人共うなずいてくれた。
唯我さんの口に触ってしまった。
いや、ユイさんと一緒で手汗をかいたはずなんで。
臭かったかも、いや臭くなるかもしれない。
完全に判った、と思う。
おそらく危険な状態だった妹さんに、唯我さんは昨日出た『エリクサーか何か』を使った。
でなければ、姉妹の言葉はおかしい。
横流しに当たるのかは唯我さん本人に聞くべきだろう。
でも、わざわざ404号室に入れたり入念に準備していた。
低確率でオーガからも『その何か』が出るんだと思う。
もしくはそういうネットワークがあるか。
「変わらないようで良かったです。
早く退院してくださいね」
珍しく僕が会話を主導する。
事情が解ったということと、切り替えて話すべきだと伝えるためだ。
唯我さんがちょっと赤くなってる気がした。
独身だったっけ。だよな。
どうでもいいけど。
「またゆっくり話しましょうか。
お話はもう大丈夫?」
「僕は大丈夫です」
もう一度姉妹に向けてジェスチャーする。
『シーッ』と『誰かいる』と。
ユイさんがOKサインする。
「でも唯我さん、どうやってここまで?」
「走って来ました、体が鈍ってましたから」
そりゃ追われるはずだ……。
「ふたりが不純な事をしないか気になりましたし」
あのー、冗談なんだろうけど……。
ユイさんも顔が真っ赤だ……。
「じゃあ、お二人はどうします?
僕が車で送りますけど」
「お母さんたちが来るんで、待って一緒に帰ります」
「私はゆっくり歩こうと思います。
鍛えないといけませんからね」
ユイさんは残るのか。
「じゃあ。お姉さんのことは任せてくださいね、メイさん」
印象を残そうと言ったが。
ちょっと頑張り過ぎたかも。
「では、私も失礼しますね」
『影』は既に消えていた。
病院の廊下を歩きながら話す。
「もう大丈夫なはずです、唯我さん」
「そんなに分かるものなんです?
例ので」
「はい、併合進化されておそらく最上級になったのかと。
生命全て感知できるみたいで、ダンジョンのフロア全部とかも。
小さな虫とかは無視しますけど」
またやってしまった。
「また改めて、きちんとお話しますね、浜辺さん。
ちなみにメンバーは大丈夫ですし、病院も安心していいですから」
車の前まで来たから結局乗るのかと思ったが。
軽く走っていく唯我さん……。
ユイさんと本当にデートだったら最高だったのに。
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