密偵
車は街中を走っている。
ちなみに、鎧等はダンジョンを出てすぐに外してある。
下は通気性の良い隊服だからね。
信じられない、助手席にはユイさんが座っている。
「あの、趣味はなんですか?」
「えーと、読書かな。
といっても漫画と冒険関係の本ばっかりですけどね」
もしかしたらラノベとかも読むのか。
話しぶりからそう感じる。
「僕は25ですけど、あ、失礼ですねごめんなさい!」
「私も同じです。多分同級生ですよね!」
20歳くらいと思ってた。
驚愕の事実。
「この先、……あそこに入ってください」
なぜか病院の駐車場だった。
「ありがとうございました。
あ、運転させてしまって……」
「いえ、ぜんぜん」
流れのまま普通に降りてロック。
「じゃあお願いします」
お願い?
ああ付いていけばいいのか。
4階の404、特別室。
多分一人部屋か。
404号室が普通にあるのか。
縁起が悪いからと、4の付く部屋が一切ない病院もあると聞く。
4階に入院するのは、命に別状のない患者ばかりなんだろう。
ユイさんが扉を少し開ける。
「めいちゃん、入るよ。
お客さんもだよ」
「いいよー。
あ、どうぞ」
高校生くらいか、妹さんっぽいな。似てる。
「この人がわたしたちの命の恩人、ヨウさんよ」
「浜辺洋です」
ん? “わたしたち”って?
「本当にありがとうございました。
姉まで助けていただいたそうで」
ん?
この子、妹さんは……。
「まさか、キャプテンから?」
「はい」
「?」
待って、昨日出たならなぜもう使えた?
というか、病気か怪我だったのか?
それ以上思考が進まない……。
それと、他にもう一つ引っかかる事が。
2つの気配。
一つは唯我さん、間違いない。
もう一つの薄すぎる影は?
【生命感知】は全ての生命を捉える。
小さな虫等は無視するが。
シャレじゃなくて。
おそらく【生命感知】持ちじゃないと分からないレベルの隠蔽っぽい。
「すみません、できたら説明をお願いします」
「はい、『あの回復薬』を使えました、すぐに」
扉が開いたのが空気の流れでわかった。
唯我さんがいた。
「おじゃましますね。
実は」
間に合わないので唯我さんの口を手で塞ぐ。
『影』のいる方を指差す。
解ってしまった。
404号室。
危ない患者が入るはずのない部屋。
『あれ』がドロップしたらすぐに使わせるつもりだったんだ、唯我さんは。
だから敢えて妹さんにここにいてもらった。
ほぼ完璧に身を隠した『影』は調査のために唯我さんを追っている。
隊の調査員、密偵だ。
お読み頂きありがとうございます。
もしよろしければ、この下の★★★★★(クリック)評価とブックマークをお願いいたします。




