『バカの一つ覚え』
続けてオークを狩る。
一見普通に戦っているように見えるかも。
実際は、集中で疲労困憊だ。
剣を【溜め】のために十分引く、武器なしでオークの前にいるようなものだ。
避けながら、首が空くのを待つ。
腕に引っかかってしまうと斬れない可能性が高い。
高さを見極めつつ、必要なら跳び、一気に力を開放する。
ぎりぎりかもしれない。
僕の素の“強さ”は他ステの四分の一程度。
十分な【溜め】でその2倍、普通の隊員にやっと届くだろうか。
それに【総合剣技2】によるアシストと実際の溜めが加わる。
それでぎりぎり。
この先成長すればするほどその差は大きくなるだろう。
考えると嫌になる。
だが今は、限界まで集中するしか無い。
少しずつ奥へ進む。
数匹いても、盾と2人の剣がいるので獲物を分けてもらっている感じ。
階段前に着いた。
やっと昼休憩。
今日も荷物持ちを引き受けた。
全く支障ないからと。
実際【加速】では無視できる魔力誤差だ。
こちらは141もある。
収納を開くのに1、アイテムボックスから移動。
配るのに時間はかからない。
そのまま収納経由でこっそり仕舞えば終わり。
サンドイッチとコーヒーを味わう。
「ヨウ、さっきの事を考えたよ。
少し待ち時間もあったし」
ゴウから切り出した。
さっき、ついつい言ってしまったことか。
『盾で殴るバカの一つ覚え』。
今更だけど、我ながら子供じみた発言だった。
「ヨウが怒っていたのは分かった。
なんとなくだが、自分自身をもう一度振り返るべきじゃないかって思ってる。
もうちょっと時間が欲しい。
妹とも話してみる」
分かったような分からないような。
お互い様だけど。
「いえ、僕もついつい……」
「ヤスはトドメ担当でレベルが凄いはずだしな。
そういうやっかみもあったかもしれん」
「『人の振り見て我が振り直せ』かなー?
いや、言ってみただけで。
ゴメンあにい」
ユイさんはずっと無言、何か考えてる?
「俺たちは本当にラッキーだ。
リーダーは本当はBランクにいるべき人だからな。
仲間たちのためにCに留まっているが」
「突然どうした?
何も出ないぞ。
本当も何も、Cランクが好きなだけだ」
ゴウは何か伝えたいのか、ただ間をもたせたかったのか。
別にどっちでもいいけど。
あ、しまった。
ゴミを仕舞うのにもう一度収納が必要だった。
9層へ進む。
【生命感知】を思い出して探る。
全て普通のオーガだ。
いつもの連携でオーガを翻弄する。
僕は中~後衛で魔法士2人のガードだ。
投石以外に役目があって嬉しい。
魔法2人は何か小声で詠唱している。
魔法方面も色々深そうだ。
そろそろ僕も始めるべきかもしれない。
【加速】用の魔力は使ったらマズいか……。
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