【加速】
【加速】の効果は既に始まっている。
視界が赤黒くなった。
【暗視】【明度補正】
赤っぽいがよく見える!
体全体が重く、空気の壁にぶつかる。
オーガキャプテンの前に回る。
貫手。
オーガがユイさんの胸に向けて手のひらを突き出している。
少し動いてる!
魔力88、速度は以前の倍近いはず。
とにかく早く!
どちらにしても動けるのは10秒。
腕は絶対斬れない、唯我さんも斬れないんだ。
それよりもこいつは強い。
もの凄く。
ユイさんを抱く。
棒のように動かない。
……へたに動かしたら怪我させるだろう。
このまま抱える。
重い。
素の重さじゃなく、自分が動くたび感じてるのと同じだ。
なんとか、オーガの横へ2歩、寝かせた。
背筋が凍った。
オーガの視線がこちらを見ていた。
こいつの勘なのかもしれない。
やはり少しだけ動いてる。
5秒はとっくに過ぎた。
動きを止める、どうやって?
あ。
(とにかく相手の動きを奪う事)
(目ですよね)
唯我さんが言った。
進化した【総合剣技】。
抜き、一瞬で思い切り両目を貫く。
自然に口へも突き刺したが、硬かった。
まだ動ける。
自分の剣が速かったからだ。
よし無理でも首へ、背後に……
……
暖かい。
大きな金属が見える。
盾だ。
「目が覚めたか。
魔力切れだな?」
「はい……」
ゴウさんの背中が暖かかった。
残念だ。
床、というか地面に降ろされた。
緊張が解けている、オーク階に上がったらしい。
「今日は帰る。
ヨウはヤスが背負え。
盾と剣の両前衛、魔法援護で行く」
「はい!」
僕以外全員が、リーダーに答えた。
「ありがとうございました。
私にヘイトが向いて。
奇跡みたいです。
それに……」
まだなにかあるよう。
告白?
「なんでもないです。
忘れてください」
忘れるのか……。
かわいいから許すけど。
駐車場というか広場にいる。
筋肉でゴツゴツしたヤスさんの温もりを感じつつ、寝てた。
多少魔力回復したので、もう普通に動ける。
唯我さんと僕だけで話す。
他全員車へ。
あのときの状況を聞く。
オーガがユイさんに向かった。
なぜかユイさんと僕がオーガの両脇に倒れていた。
ユイさんはいつの間にか横になっていたと言う。
僕は刀を抜いたまま倒れていた。
一瞬止まったようなオーガ。
ひらタンがホーリーボルト、電撃で動きを止められる可能性。
そこにゴウさんの全力シールドバッシュ(盾アタック)。
暴れるが動きのおかしいオーガ。
抑えつつ、唯我さんが動きを奪う連続斬撃。
ヤスさんがとにかく後頭部と首を突く。
後頭部貫通。
よく聞くと、オーガが目を潰されていたようだとひらタン。
僕には回復魔法が通らなかった、つまり無傷で行動不能状態。
全員がなんとなく察した。
上層へ移動。
あの時の話はそれで終わり、沈黙……。
全員数レベル上がったという。
僕からの報告が始まる。
【加速】の事以外。
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