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弱々でごめんなさい~現代ダンジョン物語  作者: 炉里 邪那胃(ろり じゃない)
第一章
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赤紙

「赤紙、ですか。まだ有効だったんですね」

「ええ社長殿、緊急事態法の終了後も引き続き平時の物として通用しています」


 社長の前に置かれた紙は緑っぽい色だ。

『赤紙』と呼ばれている事は周知の事実。

 昔の戦争の時の呼び名の名残りらしい。



 モンスターの事も含め、その辺は引退討伐隊員の手記などの出版で広く知られている。

『実録 モンスター討伐隊』は僕の愛読書だ。


 面白さで言えば海外の実録や日本のラノベの方が面白いけど。

『実録~』には本物にしか無い迫力もあるし、実際モンスターに出会ったらどうするべきかという実用的な意味もある。


 もっとも、実際出会ったら僕のように動けないだろうけれど……。


 ああ、普段モンスターに出会うことはほぼ考えられない。

 ダンジョンからは出てこないから。

 昨日のゴブリンは一番近いダンジョンの『アフれ』、最後の一匹だったそう。

 あれから僕の個人情報を名前以下、訊かれた。


 事故の処理や手続きは全て討伐隊、つまり国の負担でやってもらえた。

 ゴブのせいだったからね。


 そして、今日の朝にはもう隊員さんが赤紙と共にやって来たわけだ。

 隊員さんは制服以外は一般人と変わらない化粧っ気のある普通の女性。

 どうしても「さん」付けで呼びたくなる。

 ああ、北村さん、だっけ。



 赤紙が出れば即日討伐隊入隊させられる。

 僕は無かったけど、たまに色々凄い『スキル』を持ってたりして治安上問題があるから。

 もちろん仕事の引き継ぎなどが必要であればその間は軽い監視付きで待ってもらえるようだ。


 僕は引き継ぎは……無い。

 要するにただの平社員ってこと。



 退社の手続き等も討伐隊に任せた。

 他の社員とも一言二言交わして別れる。

 後は自分の少ない荷物を持ち帰るのみ。





 もう商用バンの軽で配属される基地に向かっている。


 僕の退社のあっさり加減を北村さんに突っ込まれるかと思ったが、何もない。

 まあこういうのは慣れてるのか。


 にしても、治安上問題のあるような人間を女性一人で相手にして大丈夫なのかな?

 ああ、僕のステータスが弱くてスキルも無いからか。



 会話の全く無いまま基地に着いた。





「細かいことは明日以降に伝えるとして、まず確認事項だ」


 会議室かミーティング室の様なところで面接らしい。

 担当は北村さんと多分上官らしき林という女性。

 最初に事故の後質問されたのは男性だったが、基地には女性が多いんだろうか。


 林という人は多少太って見えるが筋肉の塊だったりするんだろうな。


「鑑定で能力は把握しているが、初回は自己申告する規定になっている。

 私は教官と呼びなさい。北村は立ち会いだ。

 いいな?」

「はい」


 なんか口調がそれらしくなってきたな。

 昔見た自衛隊のドキュメントを思い出す。



 名前から順にステータスを読み上げる。


 ラストは『称号』だ。


「ラッキーパンチ、キリ番。

 以上です」


「称号の詳細は?」


「あっ、すいません。『777番目、おめでとう!』ですね。

 以上です」



 林教官と北村さんが見るからに困り顔に?

 顔を見合わせる直前で北村さんの咳払いで平常を装った……ように見えた。


 これって。


 もしかしたら『称号』は鑑定では見れない?

 詳細で驚いたというか戸惑ったのは間違いない。


 やられた。

 いや、どういう意味があるのか分かんないけど……。


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