研修、3日目
「ポイズンウルフは名前の通り牙に毒があります。
爪は普通に尖っていますが、問題ないはずです。
ポイントは腕じゃなく、足です」
2層を普通に進んでいく。
出た。
狼っぽい魔物、ポイズンウルフ2匹。
一匹は次の瞬間首が飛んだ、唯我さんだ。
唯我さんと僕に挟まれた残り一匹は、当然僕へ。
飛びかかってくるが、空中なら直線的で単調。
ゆっくりで躱せた、思考加速が効いているかも。
足は斬り落とせなかった、でも腱や筋肉が切れたよう。
もう問題ないが、ミスったことに気づく。
初撃で首筋を切れたはず、足は返す刀で行けてた。
背後側から後頭部に突き刺すと絶命した。
「次は初撃で首と足を斬れます、大丈夫です」
「分かってるようね……トドメの突きも正解です。
一気に行きましょう、進みますよ」
ウルフ2匹だが、いきなり援護なしだった。
色々試されてるようだ。
首と足をそれぞれ斬りつけ、問題なし。
突進の結果、背後を見せるのでトドメが刺しやすい。
そのまま進んでいく。
ゴブとウルフの混成も現れるようになったが問題なし。
5~6匹とか、初日には考えられない集団と次々戦っていく。
物理弱々なのに。
その分血まみれだ。
ウルフがレベル上げに向いているらしく、4レベルも上がった。
これだけ倒せば当然か。
無用の長物、ひらタンはちゃんと最後尾にいる。
あっごめん、【清浄】いつもありがとう……。
「さて、早いお昼と発表会ですね。
戻りましょう」
昨日よりも速く入り口まで走っていく。
ツナマヨサンドを頬張っている。
「あの、あれだけ倒したのにアイテムが出ないというのは。
そういうダンジョンなんです?」
「あえて気づくまで放っておいたのですけど。
あなたが通常のダンジョンが初めてって事を失念してましてね。
一度平田さんに頼んで偽装しましたが、気づいて良かったです。
誰にも言ってませんね?」
「はい、そういうダンジョンだと思ってたんで」
唯我さんが声を抑えて答えてくれる。
「アイテムは私の固有スキルで回収してます。
上は知ってますが、他の隊員には絶対に漏らさないように。
極秘事項です」
隠さず堂々と使ってたという事は、嘘ではないはず。
万が一バレても大きな支障はないのだろう。
もちろん誰にも言わないが。
「極秘って、唯我さんは隠蔽を……。
あっごめんなさい」
【鑑定】で見られたら『極秘』と言ってもバレバレなんじゃないか。
そう思ってつい聞いてしまった。
スキルについて聞くのは本人が開示しない限りマナー違反。
僕の場合は特殊、それでも必要以上は訊かれないし。
「ん?
固有スキルは鑑定で見れませんよ。
称号みたいなものだと言われてますね」
なんと。
『固有スキル』の項目名含め、必死で隠蔽掛けてた。
説明文が出る仕様もそう聞けばなるほどだ。
今度こっそり林教官で確認しよう。
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