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弱々でごめんなさい~現代ダンジョン物語  作者: 炉里 邪那胃(ろり じゃない)
第三章
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“次のチャンス”

※昨日6/14 04:02に続き、今日最初の更新です。

 あの青年と少女は何だったんだろう。



 自分はこの国の総理まで上り詰めた。

 総裁選勝利は「漁夫の利」と言われたが、確かにその通り。


 そしてこの地位を維持するために。

 今まで自分が守ろうとしてきたものは意味があったのか。


 なぜ今更こんな事を。



 青年は「命を捧げる覚悟」と言った。

 ズシリと響いた。

 ここに。


 石田は胸に手を当てる。


 あれは本当だ。

 一体どのような経験を積んで来たのだろう。


 あの若さで。




 ~~~~~~




 紅茶の湯を沸かし、コーヒー豆をセットする。

 次は……。


【ボックス】持ちなのでケーキを保管している。

 それをいいことに、完全にコンビニやおやつ担当だ。


 将来は主夫か。

 料理も覚えないとな。


 皿を人数分出現させ、ケーキをまず1個……。




 井上議員の言葉を思い出す。


 彼ほど知識があればレベルアップについても知ってるはず。

 僕自信がネットに書いた事で事実認定しているし。


 さっき僕が思ったこと。


『ラノベ世界なら簡単だった』


 彼も……彼の場合は実体験が無いからこそ……

 物語の普通の成り行きに直結させてしまった?

 探索を普通に思ってしまっている?


 だからこそ、この動きが始まるきっかけを作れたんだ。

 元総理を巻き込んで。


 大臣と自衛隊トップは純粋な正義感からだろうか。


 そして、『前回』は失敗した。



 生見さんは一般人に近いはずだが。

 やはり経験の差と、こちら『協会側』の人間だからか。



 実際法案が国会に出てくれば、野党の猛反対を食らうはず。

 与党内でも疑問は出るだろう。


 特にお題目のように「平和」を唱える人達からは。


 レベルアップの事はそのうちバレるだろうし。



 元総理の言葉がフラッシュバックする。


『一旦今日この話が潰れてもかまいません。

 もう一度チャンスはあるんですから』


 これだ、“次のチャンス”!


 とにかく、ゴブ討伐可能な人員大量育成。

 素性のチェックは厳重にしつつ。

 そこで止めておく、最初に考えていたとおりに。


 そのレベルでいい、初めは。



 勝負は『アフれ』後だ。

 その時に“探索者”が世間にどう見られるか。


 おそらく人数は足りず全国は守れない

 それで魔物災害の恐怖が知れ渡るだろう。


 すべてはその時の世論にかかっている。


 そこからだ。





 4個目のケーキを皿に乗せる。

 後はフォークを……。


 ケーキを取り出す間にどんだけ色々考えてたんだ。

 自分で怖くなった。


 動きを止めて考えたわけじゃない。

 単純作業の間なら、これだけの思考ができるという事。


【多重思考】。

【加速】と並んで大事な切り札かもしれないな。






 電話から2時間ほど、程よい夕食時にやってきた北村さん。


 本人によると、いろんな手続きをすっ飛ばして解雇が通知されたそう。

 それならということで即日すべてひきはらってきたらしい。


 大丈夫か色々、どっちもどっちだろ。





 今日は久々のまともな(?)レストラン。

 予約を入れたので6人テーブルが取れた。


 生見さんのヘルシー指南はお休みだ。


 全員ステーキなのが笑える。

 生見さんまで……。



「尾行されてないか気になって……。

 着くまでに時間がかかってしまいました」


「大丈夫みたいですよ」


 半径数キロには何も無い。

 マンションに来た時からずっとだ。


「僕達の事は上とかに言ってないんでしょ?」


「一切。

 一番最初のも、迷った一般人って事になってますよ」


「マークはされてないみたいですね。

【鑑定】持ちが多く出てくるまでは大丈夫でしょう。

 どうせ、居ても避けますけど。

 これからは僕達と一緒に行動お願いしますね」


「普段もです?」


「はい、一緒に僕達のダンジョンで鍛えてもらいますから」


 一瞬驚き、笑顔になる北村さん。

 ユイは黙々と肉を食べつつうなずく。


 ずっと別に大声ではなかったが、さらに声を抑えて言う。

「晴れて探索者協会に入れましたからね」


「おめでとうございます」

「おめめほーおはいあふ」

「おめでとう、ございます」


「ありがとうございます!」


 特定の単語さえ声を抑えれば後は大丈夫。

 新人歓迎とかの食事会なんて普通にある事。

 北村さんも心得ている。



 イアンのいるアメリカは場所にもよるが夜中頃?

 けど僕が口を出すまでもなく、すぐに承認された。


 もちろん、自衛隊懲戒免職の件も伝えた。


 生見さんから多少事情は伝わっている。

 なので逆に、勲章だと称賛してくれたらしい。


「良かったです、またみなさんのお役に立てるようで」


 涙こそ流さなかったが、目が潤んでいたよう……。


 肉ばかり口に入れていくユイ。

 名実ともに肉食系らしい。


「うちの林も考えておいてもらえます?

 ほぼ潜る事はなくなったんですが、【鑑定】が出たようで。

 なんだかんだ腐れ縁で離れがたくて」


 【鑑定】。


 探索開始してから多くの人を見極める必要がある。

 絶対有用だ。

『前回』は死に損なって打ちひしがれて出たスキルだったはず。

 運命が変わってしまったな。


 いやそれを言うなら……北村さんの懲戒免職もそうだし。


 そのかわり、使い潰される事も無くなった。

 ミッション失敗で、Aランクで新人担当させられてたようだし。


 そう考えると自衛隊トップもエグいな、大臣の方かな。


「今は希少ですね、イアンに掛け合ってみますので」



 僕達の周囲の人々の運命が変わってゆく。


 すべての流れが変わりつつあるのか?

 その始まりであることを願うだけだ。

お読み頂きありがとうございます。

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