“意思を伝える”
※昨日6/12 04:11に続き、今日最初の更新です。
ここまでのシナリオは聞いていた。
『その後は君に任せます。
一旦今日この話が潰れてもかまいません。
もう一度チャンスはあるんですから』
元総理の言葉を思い出す。
なぜ僕をそんなに信用できるのか。
ともかく、やるしか無い。
【多重思考】。
統合された【思考加速】も使えている。
頭が良くなるわけではない。
けど、可能な限り多くのパターンを想定できた。
総理が「再考する」意志は口にしたが、それではダメだ。
一度潰れるか、はっきり進むかの2択。
(考えがある。ユイ、これからは黙って聞いてて)
(わかった、まかせた)
もう数分しか無い。
【会話】
なんか出た。
地味な名前、【詐術】とかよりマシだが。
効果は、“相手に意思を伝える”?
当たり前過ぎると思うけど……。
僕とユイが立ち上がる。
自己紹介はしない。
どうせそれどころでは無くなる。
「総理、僕達2人は既に『探索者協会』に入っています。
部屋の反対側、あっちを見てもらえます?」
【加速】。
使わなくとも見えない速度で移動できるが、念のため。
突然反対側に現れた僕と、今話していた場所を交互に見る。
ユイ以外全員。
「そっちに戻ります!」
ユイの横にまた並ぶ。
「彼女は本当は火の魔法が得意ですが、危険なので水で」
(ボックス回収するからデカい玉を)
「ウォーターボール」
いきなりだったが、ユイならなんでも無いはず。
「消して」
実際は僕が回収した。
「僕達はこっそりダンジョンで訓練しました。
魔法で隠蔽できるから簡単ですよ。
石田総理だからお話するんです」
「そんな事が可能だったとは……」
井上議員と大臣は口をパクパクさせている。
そりゃ焦るよな……。
「おそらく、全国なら同じような人間がいるはず。
既に何十人、いや何百人かも」
事実かもしれない、自分で言ってて分からなくなる。
「そして、『ダンジョンの生物の溢れ出し』ですが。
必ず数カ月後に起こります。
僕達には、はっきり分かります。
もっと心配なのはその後。
強い生物が出れば処理できない事も有り得ます。
結局外国に依頼しなければなりません。
戦争無しで国が壊滅することもありえます。
止めるには、探索の開放しかありません。
僕達はそれを知っています」
さっきのスキル【会話】が強く発動している!
「自衛隊では無理?」
「あの大国で民間人探索者が圧倒的に多いのはご存知ですね。
秘密裏に軍もやってるでしょう。
でも、普通の武器では通用しないのは明らかです。
ダンジョン内ではいくら火力があろうと危険ですし。
可能ならとっくに軍が率先してやってるでしょう」
「しかし、いくら実力のある君たちでも……」
「総理、彼らの実力は私の数十倍はありますよ」
北村さんが察したよう。
【洞察】の効果?
「はい、石田総理。
僕達は全面的にあなたを支えます。
表に立たず、隠れた探索者たちにも対処します。
命を捧げる覚悟です」
満を持して元総理が口を開いた。
「私は彼らに全面的な信頼を置いています。
彼の言葉を保証します、石田総理。
そして井上君が世界の武器管理制度など、詳しいはずですね」
「はい、全世界のデータを集めました。
元は日本に似たような制度の国もありますよ。
草案も作っていますが、これから協力者を募ります」
「それに関しては、表には出ないように私が全面協力します。
各派閥への根回しは引き受けました。
あっ総理、有事なら日本の防衛費ではすぐに弾切れですよ」
最後も元総理が締めた。
井上議員たちは落ち着きを取り戻した様子。
色んな意味で派手にやらかしたからな。
気が気じゃなかったに違いない。
ドンドンと扉が叩かれている。
時間らしい。
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