世論
※今日は5/28 04:00に続き3回目の更新です。
読み飛ばしなきようご注意ください。
今度は元総理が井上議員をさえぎる。
「井上君、ちょっと待って。
まず状況を整理しましょうか。
全員が理解していないことには、これからの時間は無意味です。
私がメモを元に読みますが、間違いがあれば訂正を」
日本の状況を憂い、情報をまとめていた井上議員。
統合幕僚長と元総理の自分は彼を信頼、協力を申し出た。
消極的ではあるが、防衛大臣も賛同。
最終的に目指すのは、世界情勢に倣った探索者制度の制定。
だが、陸上幕僚長以下陸将達は探索権益独占を画策。
それは『国による新しい隊』のみでのダンジョン探索。
また、現総理含む他の閣僚や議員の大多数は「成り行き任せ」。
米国資産家イアン・マックスの予言は確証無し、論議に至らず。
陸上幕僚長協力を装おう「特命隊員」達の派遣。
緊急時などの細部の問題点を洗い出す予定だった。
だが、今回その内一組からとんでもない報告が上がった。
正体不明の、脅威となりうる人物との遭遇。
偶然にもこの3人と井上議員本人が揃った場で。
「平和的に話したということですが……。
警告とも取れる行為です。
あえて自衛隊の訓練場所に現れ、追尾さえ許さなかった」
「自衛隊トップとして、現状改革が急務かと」
「私も消極的賛同などとは言っていられないですな」
「ですが……。
この2人の証言があるとはいえ、現総理達にどう納得させるか」
「もういいでしょうか。
ありがとうございました、元総理。
失礼ながら、現状は変わり始めています。
順番に表示頼む」
井上議員の指示に、秘書がパソコンを操作する。
もうモニターは全員が見れる角度に動かしてあった。
「お三方に、世論の変化をお伝えしようと準備したものです。
こんな事になるとは……。
ヨミケイと毎朝、2大新聞による調査です」
2つのグラフは同じ数字。
『ほら穴騒動』に対し日本はどうするべきか。
「様子見」約90%、「積極的に世界に倣う」3%。
残りは無回答。
選択肢が2つしか無い。
「これは某国に超常的な探索者が現れた時のものです。
大きな話題でしたからね。
次は、ヨミケイが昨日出した調査結果です」
探索者についての調査。
「やりたい」「やりたくない」「法制しだい」「様子見」。
選択肢が増えている。
「やりたい」「やりたくない」が15%と同率。
「法律しだい」10%、無回答5%。
やはり「様子見」70%、日本ならそうだろうな。
「賛同者が増えているのはもちろん、調査名に注視を。
ダンジョン、この名称がいつの間にか定着しています。
他新聞やテレビも同様です、よく『ほら穴』と併記されますが」
『ダンジョン探索をどう思うか』
これがアンケートの名称だ。
「なるほど、ネット世論が実社会に大きな影響を与えている、か。
我々もいつの間にか『ダンジョン』という言葉に納得しているし」
元総理のつぶやきに、残り2人のお偉方が尋ねる。
「ネットが?
大事な国防……まあ似たようなものですが。
左右していると?」
「秘書は多少ネットには詳しいが。
大臣失格かもしれません……」
「いえ、国防を担うお二人はそんな暇はないでしょう。
私も、なんとなく考えていた程度です。
井上君、それだけじゃないんだろう?
重いモニターをわざわざ運んできたんだから」
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