転換
※今日5/28は00:00に続き2回目の更新です。
読み飛ばしなきようご注意ください。
「えー、他には……。
そうだ、魔法は使えます?」
やっと立ち直ってさらなる質問。
もう許可とかは気にしなくていいだろうな……。
「いえ、使える者はまだ少ないです。
2人とも剣を使っています」
資料に色々書いてあるんだろう、銃使用の危険性とか。
皆さすがに驚いてはいない。
「強さ、タフさ、素早さはどうです?
同じくらいあるんですよね?」
メモを見ているが、……どこからそれを手に入れたのか。
『丈夫さ』と『敏捷』の名称が食い違っている。
ああ、海外情報の誤訳か。
「44から46ですね」
「ウソはありえませんから検証はまたの機会に。
スキルは?」
「【洞察】という物を持っていて、相手の脅威度が分かります」
「僕の強さとかも?」
「いえ、ステータスを持っていないと何も……。
ちょっと待ってもらえますか」
北村が私に近づく。
小声だ。
「あの接触者の件、言っておくべきだと思うんです。
2度とないチャンスですよね」
なるほど確かにそうだ、一石二鳥どころか三鳥かも。
報告の手間も省ける。
「そうだな、ここで言おう。
私が命令したことにしておくから」
「もうそういうレベルの話じゃ……
とにかくやりましょう!」
北村が議員を押しのける勢いで戻る。
表情が変わり、自分の意志で口を開く。
「訓練中にとんでもない男性と遭遇しました。
スキル【洞察】では100レベルをはるかに超えて……
比較対象が無くて分かりにくいですが200はあったと思います。
その報告のために戻りました、河野統合幕僚長」
「えっ、それってぜんぜん意味不明……」
司会役だった井上議員が混乱している。
「怪我は? 被害はどうだったのかね!?
何とも無いようには見えるが、何をされた!?」
怒鳴るように尋ねる幕僚長。
「いえ、その人物は私たちにステータスについて説明を。
そしてそのままどこかへ消失しました」
「なるほど、我が国の者ではあり得ませんね。
スキルという物の正確さなどはそちらで調べるとして。
何かの予告に類する事、その男の喋り方、人種、等々。
ここでまとめて聞き取ってよろしいでしょうか」
元総理だ。
訊かれると思ったことを全て言ってくれた。
顔は一瞬見ただけで、若い日本人っぽいアジア系。
言葉に訛りはなく、日本語は完璧に思えた。
一方的に話したのは、
『ステータスの初期値とその成長度の関係』
のみ。
敵意がないことを示した?
だが日本人ではありえない、世界でもトップと思えるレベル。
スキル【洞察】は隊内で幾度も検証した。
隊内のダンジョン初心者含めテストしたが、ほぼ正解。
1・2レベル程度のズレがあっただけ。
成長度の違いでレベルを読み違えるよう。
「井上君の説明とお二人の実演が役立ちましたね。
あれがなければその者の脅威度は想像も付かなかった。
防衛大臣、統合幕僚長のお二人は覚悟がおありで?
いや、だからこの2名に特命を出したんでしょう」
「井上君に話は聞いていたが、大臣として真剣に考えた事は……」
「自衛隊トップとしてやるべきことをやるつもりでした。
陸上幕僚長が大きな障害でしたので。
それを打ち消しても余りある、まさかの報告です。
それで……我が国でアレをやるには、難しすぎますな。
特に今の総理では」
「待ってください!」
井上議員だ。
最初のイメージとは打って変わって堂々として見える。
「世の中も変わりつつあるんですよ。
こんな国でも」
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