理解者?
※昨日5/26 04:00に続き、今日最初の更新です。
これほど全員にピッタリ当てはまるとは。
林自身も北村も、最初にステが出た時の数字は覚えていた。
ゴブなら数人で掛かっても2レベル程度上がってしまう。
逆算してレベル1からの上がり具合を調べた。
やはり7が最低値らしく、11が最高のよう。
遠慮しつつ、他の4人にも聞いてその場で計算した。
あの男の言う法則通りだった。
ムリに聞いて悪いと皆に言うと、役立ったと逆に感謝された。
2人で比較して偶然分かったということにしている。
この法則は広まるだろう。
私は……剣士を続けるのはムリだ。
そして魔力や知力はあるが、敏捷が致命的に低い。
魔法を鍛えてもそのうち連携さえ取れなくなる?
どちらにしろこの任務が終わったら、事務職にでもしてもらおう。
ダンジョン攻略のために生まれてきたような北村とは違う。
「待たせたな」
慌てて立ち上がる。
こんな事さえ北村の方が速いな、やはり。
ここは外国で言えば陸軍参謀本部、陸幕と呼ばれる施設。
お偉方のいる場所だ。
「かしこまらなくていい、林君に北村君。
特務報告だから人払いもしてあるし。」
「わかりました幕僚長。
座ろうか、北村」
相手は陸上幕僚長、トップだ。
良いと言われても、失礼にならないようにしないと。
「報告があるという事だな、戻ったのは」
「北村が報告します」
「はい、念には念を入れて報告に参りました。
報告書のとおり、民間人に接触。
偶然のようで迂回を指示、他特にはありません。
『討伐隊』編成に向けての障害は無しと思われます」
「なるほど、特務自体には支障なしか。
まったく、こんな些細な事も口頭報告とは。
河野のやつも面倒くさい指示を出したものだ。
……ご苦労だった」
「はっ!」
2人は立ち上がり一礼。
脱帽時の敬礼だ。
陸上幕僚長が机側の扉から、先に部屋を出ていく。
「ご苦労さん!」
外で2人を待っていたのはスーツ姿の男。
スーツの色は地味だが、ニヤニヤ顔に性格が出ている。
これでも国会議員、ペーペーだが。
「帰ってきたってことは何かあったんですよね?
そうだ、ステータス上がったんでしょ?
スキルは?」
「話せるわけないだろう!」
ついつい大声が出る。
「まあまあ北村さん、私たちの数少ない理解者ですから」
「それでも失礼なものは失礼だ」
「ご、ごめんなさい。
僕も探索者……ステ持ちに会うのははじめてなんで。
ついつい興奮しまして」
「前にも会っただろ」
「いえ、本格的な『ステ持ち』になってからは初めてですから」
白のファミリーカーに乗り、3人は会合場所へ向かう。
議員など普通は来そうにない、古い会館だ。
下町なので車通りも少ない。
追尾されればすぐに分かるはず。
老齢の男性が管理人だった。
案内され、議員に続き会議室に入る。
学校行事で使うような折りたたみ机とイスだ。
「このお二人が例の。
僕の言っていたこともちゃんと証明します。
世界は変わったんです」
少しえらそうで気に食わないが。
ペーペー議員は自信に満ちているように見えた。
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