再転属
「大変大変、“キリ番君”やっちゃったみたい!」
「どうした?
北村からこっち来るって、槍でも降りそうだな」
訓練生は昨日送り出したばかりでもういない。
林が一応出勤して着替え中、北村が飛び込んできたのだ。
新人が集中しなければ基本、基地内のこのセクションには2人だけだ。
「投入研修だって、唯我さんのパーティーに」
「どこ情報だ?」
「正式辞令よ!」
制服にきつそうに腕を通しながら林は答える。
「あのステじゃあ、相当我慢が要るだろうな。
上がっても知れてるし。
せめて20レベまで待つべきだがな」
「でも、【突き】一発で先輩を吹っ飛ばしたんでしょ?」
「油断してたんだ、ノーガードだったしな。
私のステも大体わかってるだろ」
~~~~~~
出勤すると一人だけ呼ばれ、待つよう言われた。
「ふーん、なるほど」
声に振り返ると、北村さんと林教官だった。
また【鑑定】されたようだ。
隠蔽はもちろん出来てるな。
あ、車が行ってしまった……。
他の新人全員乗り込んだやつだ。
置いていかれたというか……。
「またこちらで訓練なんですね?」
「いえ、実地研修が決まったの。
Cランククラスのパーティーに同行することになるわ」
「急ですまんが、私達も今朝聞いたんでな」
「いきなりCランクとですか!?」
「リーダーがCランクで、メンバーはDもいるわ。
フォローもできるってことでしょうね。
実際やらないと分からないけど」
背筋が凍った。
「実戦、ですよね?
研修と言っても」
「正式に研修になっているから無茶はしないと思うが。
安全マージンは取った上でパワーレベリング程度は覚悟だな」
大型ワゴンが入ってきた。
間違いないようだ。
降りてきたのは女性2人だけだった。
ひょろっと背の高い……剣士か。
茶髪でちょっと化粧が濃く見える。
もう一人は身長よりわずかに低い木の杖を持っている。
背が低くて細身、中高生に間違えられそう。
「コード『唯我独尊』のリーダー、剣士の唯我です。
説明はありましたよね?」
「はい」
「私はヒーラー担当の平田です。
『ヒーラーだ ひーらーた ひらた』って覚えるといいですよ」
「今日は邪魔なメンバー3人は休ませました。
どうせやることも無いでしょうし」
「討伐隊ではパーティー名はコードと呼んでるの」
北村さんからフォローが。
昨日はコードとか聞かなかったな。
初心者教習だからパーティーは関係ないのか。
そして、やはり研修担当は女性か。
昨日のは特別だったよう。
「唯我、ちょっと話しておきたい事がある。
浜辺はその間に準備を」
自分が鎧も剣も持ってないことにやっと気づいた。
林教官と唯我さん、北村さんと僕はそれぞれの場所へ向かう。
平田さんが一人、広場にぽつんと立っていた。
「えーと、剣や鎧はレンタルしてもらえるんですね?」
「ふふっ、ここがどこだと思ってるの。
支給品よ」
ラノベ世界に毒されすぎている僕だった……。
~~~~~~
「彼のレベルやステは正式に聞いてないよな?」
「スキルはデータにありますね。
他は面倒ですけど尋ねるつもりでした」
「レベルは4、昨日一日訓練で上げただけだ。
それはいいが。
体力・強さ・丈夫さの物理要素全てが初期値は7だ。
いまは1とか2程度上がっているがな」
「なるほど低いですね、剣メインとばかり思ってましたが。
スキルが良いとはいえ、実地に参加させるとは。
どういう……」
「そこは察しろ。
肉体強化が生えるか、20レベ程度までは我慢で頼む。
そこまで行けば魔法士の道もアリだしな」
「……わかりました」
林の過去を知っているのか、唯我は静かに答えた。
お読み頂きありがとうございます。
もしよろしければ、この下の★★★★★(クリック)評価とブックマークをお願いいたします。