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改造執事フランク

「……おかえり、シャーロット」


「どうも、Lv0スキルに目覚めたので帰ってきました。『慈悲』ですね」


宿の部屋の中。

麻袋を引き摺りながら入ってきた彼女は、いつもより少し狂ったような笑みを浮かべていた。

返り血を浴びているのは、もしかすると人を殺したからなのかもしれない。

……勇者パーティ時代で既に何人も殺したせいで、特にその辺は気にならないが。


「……固有スキル二つなんて、昔のパーティを思い出すね。僕以外は三つ発現させてたわけだし、勇者は五つ持ってたよ」


「ほう、勇者パーティに……才能はあったようですなぁ、ユワレ殿と違って」


「言わないでよ、君だってこっち側じゃないか」


けらけら、とひとしきり笑った後、なんとなくムカついたので人差し指を噛みちぎる。

すぐにどこかにダメージが飛ばされたのか、あるいは白魔法で再生させたのか。

よくわからないが、とりあえず気は治ったのでなんとなく先ほど受けてきた依頼を持ってくる。


「今日は指向を変えて山での依頼だね。討伐対象は……『オーク』って話だよ」


「オーク……シンプルに身体能力が厄介な相手ですな」


「でも、レベル0(弱さ)スキル(ステータス)をねじ伏せてきた私たちなら!」


手を合わせて、目を見合わせる。

僕らの作戦は、いつものようにハシゴを前提として始まろうとした。


──その時だった。


「はじめまして」


「……殺す」


突如窓から入ってきた、執事服の男。

彼に対して、ラスティーが突然剣を振り抜いたのはほんの一瞬のことだった。


「……殺した、筈ですがな」


「失敗です」


確かに見事な太刀筋だった。

しかし、彼は服の一枚さえ斬られていない姿勢で立っているというのだ。


「私の剣が通らない、まさかその服が……⁉︎」


「この服は『死辻斬』といいます。耐刃耐寒耐熱対衝撃耐乾燥耐水耐魔法繊維の『刑糸(デッドスレッド)』でできています」


言われつつも今度は顔に狙いを定めたラスティー。

だが、今度は彼の口に突きをあっさりと咥えられ、噛みつきによって切先で止められてしまった。


──信じられない、なんて顎をしているんだ!


「……なんで窓から入って来たかだけ教えてよ」


彼女の技を服で受け流し、受け止めては噛み付く執事服の男。

どうやら彼も、相当イかれた人間であることだけは理解できた。反撃しないのは紳士だからなのか、あるいは……


「最短ルートを選択しました」


「……っ!理解できませんな!まるで、人の心が存在しないみたいな……!」


刺突をノーガードで受け止められ、息を切らすラスティーを庇って前に出た。

そのまま彼の肩に手を置き、そっと耳打ちする。


「……悪いねえ、この子は男嫌いなんだ。初対面の男性を見ると殺戮衝動のスキルが発動しちゃって、ちょっと関わりたくないレベルなんだよ」


「了解しました。私はフランクです。自己紹介をさせていただきます」


[フランク]

職業:研究者、執事


体力:error

筋力:A

頑丈:A

敏捷:S

魔力:E

精神:error

幸運:E


スキル:[憤怒:Lv0][料理:Lv11][護衛:Lv14][乗馬:Lv34][噛みつき:Lv50][研究:Lv49][解析:Lv50][改造:Lv50][再生:Lv3][身体能力向上:Lv13][跳躍力上昇:Lv31][ブレス:Lv3][情報分析:Lv5][自動防御:Lv20][疲労回復速度上昇:Lv50][統率:Lv0]


固有スキル:[帝王の声][狂気の科学者][鉄人執事]


……異様だ。

確かに、ステータスは高いといってもいいだろう。

固有スキル三つは勇者パーティレベルとさえ言える。

しかしLv0となっているスキルが、なぜその二つなのか。


「……どうしてここにきたのか、教えてくれるかな」


「はい。私が一番仕事ができたため先輩や同僚に自分と同じことをする様に言っていたのですが、全員『過労』が原因となり死亡しました。趣味の研究をするための予算が尽きる恐れがありましたので、そのため、急遽冒険者に登録し、平均人員に一人だけ届かないパーティを追跡しました」


大体わかった。

つまり彼は『帝王の声』で『統率力Lv0』のデメリットを無理やり補うかのように『体力S』の自身と同じ働きをさせ、全員を心身共に壊してしまい……その罪で彼自身もクビになったのだ。


……できれば相手にしたくないタイプの人間が来た。

どちらかというと強者の側の人間なのだろうが、様子を見るにそもそも善悪の判断がついていないように思えるのだ。


──つまり、弱者の味方につけることもできる。


「……フランク。僕はユワレだ、よろしく。弱者のため、共に戦おう」


「了解しました、ご主人様」


交わし合う手と手。

……初めての男の仲間なのに、ちっとも気が休まらない。

気の休まる方の女子二人、彼女らの嫌そうな視線と共に、僕は奇怪な執事をパーティに迎え入れたのだった。

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