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【コミカライズ】百花娘々奮闘記~残念公主は天龍と花の夢を見る~  作者: 高井うしお


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31話 大寺院の儀式

「ちょっと! あんたたちどこからやってきたのよ!」


 翌朝、どこからともなくやってきた女官達に陽梅は部屋の端に追いやられていた。


「儀式のお支度の手伝いにやってきました。陽梅どのはどうぞそちらに」

「萌麗様の女官は私よ!」

「失礼ながら儀礼用の着付けや髪結いはご存じないかと」

「きぃー!」


 陽梅は軽くあしらわれて癇癪を起こしている。そんな最中にも萌麗は女官達の手によって儀礼用の衣装を着せられて、髪を高く大きく結われて冠と簪をてんこ盛りにさせられている。


「お支度ができました。ではまた迎えが来るまでお待ちください」

「あ、はい……」


 女官達が一斉に下がると、がらんとした部屋に萌麗と陽梅だけが取り残される。


「馬鹿にしてくれちゃって!」


 陽梅が憤慨する横で、萌麗はぐらぐらする頭を抑えた。


「重たい……」


 この金やら玉石やらで飾られた装飾品は一体いくらほどかかるのだろうと萌麗は思った。そしてこんなものでは済まない金があの大寺院には使われているはずなのである。その費用は一体どこから出たのか……。


「萌麗様」

「血税を注いでまで作るようなものなのかしらね」


 萌麗はそう呟きながら窓の外を見つめた。その外にはおそらく寺院まで続く護衛と高官の列が出来ている。


「いまさら逃げ出すこともできないわ」

「……」


 萌麗のため息交じりの言葉に陽梅は不安を募らせた。




「これが大寺院ですか」

「確かに……巨大な建物だな」


 二人の前に姿を現した大寺院はやたらと背が高く、見上げると首が痛くなるようだった。


「中はどうなってるんですかね」

「さあな」


 その前の広場の最前列に慧英と紫芳はいる。まもなく儀式がはじまるらしい。


「ご来賓の皆様、この欧蝉大寺院が人民の救済と人心の安寧を永久に実現するでありましょう」


 道士達のそのような言葉とともに、銅鑼が鳴り、布をかけた御輿が外から運び込まれて来た。


「あれが大鳳の像ですかね」

「そのようだ」


 寺院の前に運び込まれた像の布が取り払われる。羽ばたく大きな翼が見事な像が姿を現した。頭の先がら爪の先まで黄金でキラキラと輝いている。その眼には琥珀だろうか、玉が嵌まっていた。


「これは素晴らしい」


 周囲の高官達はその像を見て口々に褒めそやした。その真意はともかくとして。


「うわ、でかいな」


 紫芳はただただその大きさに驚いている。


「この像の為になにを犠牲にしたのだろうな」


 そして慧英はじっとその鳳の像を見ながら呟いた。


 寺院の象徴ともいえるこの像は屋根の上に取り付けられるらしい。縄がかけられて、寺院の屋根の上に少しずつ引き上げられている。


「萌麗はどうしたのだろう」

「寺院の中ですかね」


 やがて鳳の像が屋根に固定されると、ゆっくりと寺院の巨大な扉が開いた。


「おおっ……」


 広間に待機する官僚や高官たちがどよめく。扉がすっかり開くと、そこに現われたのは巨大な女仙の像であった。その背丈は寺院の三階まで届くほどの大きさである。そして……。


「あの顔は、皇太后では……」

「げっ」


 その像の顔は皇太后と同じ顔をしていた。慧英は目の前にある自己顕示欲の塊に吐き気がした。


「これは! 衆生を救済する『大光輝欧陽王母像』。この寺院の建立に力を戴いた欧陽皇太后様を模してございます」


 道士のそのような説明はなされた。やはり、この像は皇太后の像そのものらしい。人々はそれを神仏とあがめよということなのだろうか。


「悪趣味だな」


 慧英がそう言うと、周りの官僚達がびくりとした顔で振り向いた。しかしまあ、慧英には知った事ではない。


「では、神像を守護する鳳の彫像への祝詞を、翠淳公主にあげていただきます」

「はあ、やっとか」


 ここでようやく萌麗の出番らしい。慧英と紫芳は寺院の中から萌麗が出てくるのをじっと待った。


「……あれ?」


 ところがいつまでたっても萌麗が出て来ない。


「あ、あそこ……」


 紫芳が指を差した。その先には萌麗の姿があった。だが、そこはなんと神像の掲げた手のひらの上だった。


「あんな所に……」




「こ、ここを上がるの」

「はい、翠淳公主様。そこに足場がありますゆえ」

「……」


 確かに足場はある。だけどそれはハシゴに毛の生えた程度のものだった。


「さあ、祝詞をあげてください」

「は……はい」


 萌麗は恐る恐る足を踏み出した。足場自体はしっかりしていたが、慣れない萌麗は頼りない足元が恐ろしかった。それでも背後の道士に急かされて足を踏み出す。


「ふう……」


 そしてようやく神像の手のひらの上にたどり着いた。


「は、早く祝詞を……」


 萌麗が巻物を広げ、なんとか祝詞をあげた。そしてさっさと退出しようとした時である。胸元に仕舞っていた如意宝珠が光を放った。


「……!? どこ?」


 萌麗は慌てて宝珠を取り出す。その光は頭上を向いている。


「まさか……屋根の上……?」


 萌麗は足場を戻って屋根の上に登ろうとした。その時、足元がずるっと滑った。


「あっ……」


 萌麗はそのまま遙か下に落下していった。


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