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政略結婚のため努力してきましたが、追い出されてしまいました  作者: あきづきみなと


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王宮の客間には、もちろん区分分けがされている。諸外国からの正式な使節に当てる最上級の部屋から、商売の許可をもらいにきた商人を入れる小部屋まで、広さも等級も様々だ。

シモンの一行に与えられたのは、それほど格式の高い部屋ではなかった。シモンやレイフォードも不満を感じはしても、それを表現しない程度の分別はある。

とはいえ、最下級の客間でも仮にも王宮だ。一般市民からすれば豪華で贅沢な空間ととらえられるのも無理はない。

そして彼らと一緒にやってきたデイジーは、庶民として生まれ庶民として育ってきた。贅沢を覚えていても、身についている訳ではない。

「素敵な部屋よねー。シモンもレイフォードも、せっかくだからゆっくり休めばいいのに」

客間は応接セットのある部屋と寝室が二部屋。調度品はまあそれなりの品が置かれており、侍従がご用聞きに訪れたりもした。

今室内に残っているのはデイジー一人きり、侍女さえ連れていない。

彼女は元々、自分と母親以外の同性とは極端に折り合いが悪い。しばしば「いじめられてる」「バカにされた」とシモンに泣きつくが、彼女の被害妄想がほとんどだ。

しかもそのおかげで女性の使用人が居着かないし、家庭教師もすぐ辞めてしまう。その辺りは母親のダリアも似たような性格なので、侍女もメイドももっと下級の下働きも、揃って長続きしない。

そして男性の使用人はと言えば、母娘が揃って顔で選ぶので見た目の水準は高い。だが見る眼はないので、仕事は大してできず他所のメイドを誑かしたり小金をちょろまかしたりするような者ばかりなので、こちらもあまり続かない。

はっきり言えば、人を使う能力が低いのだ。ダリアもデイジーも、その意味では貴族の家で使用人をまとめて采配を振るうことはできないし、その必要性を理解していない。

「うーん、シモンたちいつまでかかるんだろ。暇ー」

ごろりとソファに転がる。ふんわり沈む座面は、滑らかな布が張られている。

このソファだけでも、エルスパス領の集落一つ分の税収ほどかかっている。派手ではないが、質の良い素材を熟練工が丁寧に作ったものだ。

素材の質を高め、職人を育て、そして何よりその質の向上を宣伝して認められることで、はじめて価格も上がるのだ。例え品が良く作りも丁寧でも、名の無い……或いは知名度が低いものには、値もそれなりにしかならない。

それをシモンは理解しなかった。一点だけ豪華な品を採算度外視で作って王家に献上し、それに似た廉価品を高値で売りさばこうとして王都の商人には全く相手にされなかったのだ。

その辺りにデイジーは関与していない。彼女は「働くのは男性のやること。女性は彼らを癒すのが仕事」という母の言葉を鵜呑みにしている。それも、自分がちやほやされないと機嫌が悪くなるので全く癒すことになっていないのだが。

「うーん暇だあ……何か無いの、この部屋」

ごろごろするにも飽きてデイジーは起き上がった。

彼らに与えられた客間はそれなりの調度だが、あくまで客間なので家具以外はほとんどものが置かれていない。せいぜい花や絵が飾られていたりする程度だ。簡単な浴室とトイレもついているが、消耗品は最低限でしかない。

一応朝のうちはご用聞きにきた使用人もいたが、シモンたちが部屋を空けている以上それもない。デイジーは正確には今回呼ばれていないので(ほとんど勝手についてきた)、客として扱われていない。要求すればお茶くらいは出されたかもしれないが。


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