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政略結婚のため努力してきましたが、追い出されてしまいました  作者: あきづきみなと


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元から、若い女性であるブリジッタが領主になることにいい顔をしない領民もそれなりにはいたし、その中には赴任したシモンたちに媚びて甘い汁を吸おうとした者たちもいたようだが、彼らも現実の見えない上に傲慢な振る舞いに辟易しているとか。

そしてシモンの妻となったデイジーも、こんな田舎じゃ夜会も舞踏会も開かれない、お洒落なドレスや宝石も売ってないとぎゃんぎゃん騒ぎたてる始末。元々は庶民の娘だったはずなのに、不相応な贅沢を覚えた彼女はちょっと羽振りのよさそうな商人や見た目のいい男をみかけると途端にすり寄っていくので、こちらももめ事が絶えない。

その若者たちの頼みの綱だったはずのライアンは、「領地運営には全く伝手も手腕もなくて」と領地の館にこもりきり。だが妻のダリアは娘以上にあちこちの男に粉をかけまくって周りから疎まれているのにも気づかないのか知らないふりをしているのか。

領民がどんどん流出していき、しかも本来それを留める法の軛からは外されているエルスパス領は、おそらくもう先がない。その事実は、周辺の土地とそれらを統治する貴族、或いは拠点を置く商人たちにも既に知られているだろう。

中には、逃げ出す領民にそのための金を貸し付ける商売を始めた者さえいる。これは実際にその借りた金で移住してきた者たちに聞いた話だ。

統治者であるシモンたちには、他の貴族からも冷ややかな目が注がれていると聞くし、反面ブリジッタに対しては同情が寄せられているらしい。もっとも彼女はあれ以来デザスタ領から出ないで、カレルたちを助けてくれている。

カレルはこれまで、あまり王都との連絡は密でなかった。王族として自分の存在感が強すぎると、王位継承権を返上した意味がないと考えていたのだ。

だが今回の件で、報告を兼ねて王宮とも連絡を取り合っている。そうすると、甥姪の中でこの第二王子のみ群を抜いて評判が悪い。割と最近、エルスパス侯爵代行の内縁の娘と懇意になってかららしいが、婚約者の義妹に浮気するシモンも義姉の婚約者を寝とるデイジーとかいう娘もどっちもどっち、というのが王都の噂だ。

寝とる、とはいえ肉体関係の有無はさほど問題ではない。貴族子女ならば婚姻前のふしだらな噂は致命的ではあるが、デイジーは(本人の認識はさておき)そもそも貴族令嬢ではないし、婚約者に手出しできない貴族令息が手近な使用人や専門の娼婦で欲求を紛らわせるのは珍しくもない話だ。

ただシモンの行いは人倫にもとると非難轟々、要は家付き娘に婿入りした男がその妻を追い出して家を乗っ取ろうとしている、と見られている。「家」というものを重要視するこの社会では、相当に忌避される行いだ。

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