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政略結婚のため努力してきましたが、追い出されてしまいました  作者: あきづきみなと


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甥の手紙では悪し様に言われていたブリジッタだが、カレルのデザスタ領では得がたい重要性を持っていた。

長く領地運営に関わっていたので、そちらの伝手や知識が豊富。そして本人の資質として、真面目できちんとした考えを持つ。ちょっとした相談事や何かでも、ちょっと過ぎるくらい真面目に考えてくれる。

正直なところ、カレルは長く騎士団に身を置いていたので、領地運営の実務はあまり得手では無く、その部下たちも殆ど同様だ。カレルだけでなく皆も頑張ってくれてはいるのだが、お互いに足りない箇所が多い。

そしてそれを埋めてくれるのがブリジッタだった。

年は若いが経験は長い。そして彼女が運営していた領地、エルスパス領も他の土地よりはデザスタ領に近い部分がある。

「羊、なら私の知り合いが扱っています。商会なので、幾らかお金はかかりますが、確実ですよ」

何より有り難いのはその人脈だろう。その経験でかなり国内の商会とは交誼を結んでいたようだ。どんなものでも、ある程度の伝手は有しているらしい。

カレルには若干甥を憐れむ気持ちもある。婚約者があまりに出来が良い分、周囲としてはどうしてもシモンに対しては不安や不満が大きい。本人は決して認めないが、劣等感を抱くには十分だ。

ブリジッタは同じ年頃の貴族令嬢と比べても、有能だ。実用的とでも言うか、即戦力になる。

経験があることは言うまでもないが、更に人脈がある。それも、幼い頃から母親の後を継ぐために努力して得たものだ。

現に、この半年で彼女を訪ねて辺境のデザスタ領までやってくる者の多いこと。ほとんどがエルスパス領の者で、シモンたちのやり方を厭い逃げてきた者で、しかも彼らは大方デザスタ領への移民を希望した。

おそらく公爵の指示だろうが、エルスパス領はシモンに預けられたものの、かなり制約が付けられている。

税率は変えられないし、領民のこうした流出も例外的に許可されている。逆にシモンたちは何らかの行動には必ず契約書を書かねばならない。もちろんその契約を守る義務もあり、他にも細々した取り決めも含め、それを守っているか確認し続ける監査官も常駐することになった。

対象はシモンとライアン元侯爵代行に加えてその内縁の妻子、そしてこちらも元公爵家の三男レイフォード。

特にレイフォードは貴族籍を抜かれ、収入も財産もなく、単なるシモンの部下として彼らと共にエルスパス領に移った。

むしろ意気揚々と現地入りした彼らは、大した時間を置かず現実を見せつけられたそうだ。

「ブリジッタ、そういえばマクレーン親方とは話をした?」

「はい。量は少ないけれど、試す分には大丈夫だろうということでした」

職人や商人は、ブリジッタが長年努力し蓄積してきた成果を評価している。最初は右も左もわからなかった彼女が、自ら時間をかけこれまでの経緯や報告を調べて少しずつ身につけたものだ。

一方、シモンはそれまで蓄積された資料に目もくれず、ごみにしかねないほどだったという。しかし領地運営の資料は、基本的に10年は保管の義務がある。監査官に諌められ、それでも自分たちの「画期的な」やり方を押し通そうとしたり、税率は変えられない代わりに物品を物納させようとしたりと、いろいろしているらしい。

例えば、エルスパス領では牧畜、特に牧羊が盛んだ。羊は羊毛と肉になる優秀な家畜で、エルスパス領では羊毛を使う紡績も重要な産業になりつつある。

しかしそうして作られるのは、比較的厚手の丈夫な布が多く、庶民の作業着などにされるものがほとんどだ。にもかかわらず、「薄手の美しい布を仕立てれば、高く売れる」だの「子羊は全部屠殺して肉にすれば儲かる」だの、これまでの状況も先行きも全く無理解なことばかり提案しているらしい。

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