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34.聖獣の行方 -侯爵閣下目線-

「団長。本当にここであってるのでしょうか?」


疲れている足を動かしながら私に話しかけてくるのは私と同じ第1魔法騎士団にいるマイル・フィニアス・メデェラフォンだ。彼は武官の家系であるメデェラフォン伯爵家の次男だ。王家の信頼も厚く、彼自身とても若いため、今回の任務にはもってこいの人物である。


「あぁ。報告によるとここらしい。」

「ですが、大分奥深くまで来ましたね。」


私達は今、聖獣の住処と言われるスルビアナ王国とパッフェルト王国の国境にあるアルゲイドという森にきている。森の中に国境があるため、念の為ではあるがスルビアナ王国には国境を越える許可は貰ってある。


「団長これ!ここ見てください!」


そうやって下を指さしながら話しかけてきたのは、私とマイルと来たアンドレイクだ。

今回の任務は少数精鋭ということで計5名で来ている。

彼らの他に、ファスター伯爵家三男セドリック・パウル・ファスターとロバルト子爵家長男クリストフ・エリアス・ロバルトがいる。


アンドレイクが指さした場所にあったのは明らかな聖獣の足跡だった。この森にはたくさんの動物やらがいる。そのたくさんの動物の足跡から聖獣の足跡を見つけ出すのは一見難しそうに見えて、難しくはない。

聖獣の足跡は「足の跡」では無いからだ。

簡単に言えば魔力の跡というのが正しい。けれど決して誰もが見つけられる訳では無い。

魔力が聖獣の足の形に地面に刻まれるのだ。


「やはりここで間違いないようですね。」


アンドレイクは聖獣の足跡のあたりに膝を立てるようにしゃがむ。


「魔力が濃く残ってるので最近着いたもののようです。」


その時、木の奥から複数の黒い人影が目に飛び込んできた。


「隠れろ。」


私の声に全員が近くの木の影やらに身を隠す。

バラバラにはなったが、魔法により意思疎通はできる。魔法による意思疎通はひとつしかなく、相手と自身で魔力の交換をすることだ。やり方は自身に記憶された通信したい相手の魔力を選びそこに自身の伝えたい内容と共に魔法を流す。


すると相手の脳内にその内容が聞こえる。一定の距離の近さが必要であり、距離があると時間が伝わるのに時間がかかったり、雑音が混じったりするが、この距離ではそのような心配はないだろう。

一度に数人との会話が可能ではあるが、伝えたい相手との魔力選びだったりなど、色々と複雑であり、日常に使うには不向きなためこういう任務のときだったり、本当の緊急時以外は使わない。


〘 団長…どうしたんですか?〙


アンドレイクの声が脳内に聞こえる。


〘 前方の方向に黒い人影が複数ある。〙


隊5人全員に報告するとちょうど、影たちはどこかへ行こうと動き出す。


〘 どこかへ行こうとしているようです。どうしますか?〙


今度はマイルからの声が聞こえる


〘 十分に距離をとって後を追う。〙

〘 分かりました。〙


その言葉とともに全員が黒い影を追い始めた。


__________________________________



どれくらい経っただろうか。目の前の黒い人影は一向に止まりそうにない。

ここはもう隣国の境界を越えたところだろうか。

森の中の境界というのはとても分かりづらい。

こんな所に国境を通すなど、余程仲の良い国ではないと出来ない。それもそのはずで、現在の国王陛下であるユールの祖母は、スルビアナからこのパッフェルトに嫁いできた。


しばらくすると、黒い人影たちはピタリと止まり、木の影に隠れた。


〘 団長気づかれたのでしょうか?〙


団員たちの声が頭に響く。その声の通りに私も彼らに気付かれたかと思った。すると彼らは、数秒のうちに再度動き出した。けれど、先程とは違い、何か特定の場所へと一斉に動き出した。その彼らの視線の先にいたのは…





______________________聖獣だった






彼らは、一斉に聖獣に襲いかかったのだ。


〘 団長!!!〙


息が合うように全員の声が聞こえる。

聖獣が襲われている。聖獣を助けたい。けれどそれは苦渋の決断だった。私達は、事を荒立ててはいけない。聖獣が襲われているのが事実だとわかった以上、これはスルビアナだけでの問題ではない。

しかし、今私たちの立場は、彼らに姿を晒すような行動を許されていない。ここでバレれば全てが水の泡となる。


どうするのが正解なのか分からぬまま、時間だけがすぎていく、経った数秒の出来事が異様に長く感じる。


目の前には3人、人数的にどうにかなる。

…が、他にいないとは限らない。それに奴らの力がどのくらいかさえ知らぬのだ。


あまりにも無鉄砲すぎる…………


けれど、目の前の聖獣は我々の敬愛すべき精霊の仲間だ。


覚悟を決め、陛下に状況を伝えるために地魔法で葉や蔦を利用し、緑の鳥を作りだす。

地魔法の適性はないが、幸いにもここは森であり、葉や土は十分にある。


鳥を城へ飛ばしたあとに、全員に魔法を通して言葉を送る。


〘 全員、準備はいいか。緊急時は即退散する。殲滅はするな。必ず1人は生かして捕らえろ。〙


〘 了解。〙


5人全員から合図を貰う。


〘 行くぞ。〙


その後、私の合図と共に、黒い人影達に向かって一斉に動き出した。

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