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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
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お詫びの品を貰いました



「巻き込まれたのって、リーン君だったの。大丈夫だった?」


ギルドに戻るとエルルさんが慌てて僕に駆け寄ってきた。

僕はまたまた説明をする。

これで4度目だ。

リカルドさん、領主様に続き、先ほど門番の兵士にも同じ説明をしたばかりだった。

エルルさんは僕の説明を聞くとソラを見る。

やっぱり、怖いのかな・・・。

だよね。ランクCのモンスターを倒す犬だもんね。

実際、冒険者の一部と門番の兵士はソラを避けていた。

領主様は逆に戦いたがっていたが・・・。


「ソラ君偉いねー。リーン君をちゃんと守ってあげたんだ。」


エルルさんはそう言うとソラを抱きしめて頭を撫でていた。

ソラは嬉しそうに尻尾を振っている。


「エルルさん。ソラが怖くないんですか?」

「えっ、なんで?こんなにかわいいのに。」


そう言って、ソラをさらにギュッと抱きしめる。

ソラもそれは嫌だったようだ。

するりとエルルさんの腕からすり抜けると僕の後ろに隠れる。


「おい、いい加減にしろ、エルル。仕事をしろ。坊主の依頼完了の処理をさっさとしろ」


リカルドさんに怒られたエルルさんは慌てて仕事モードに戻るのだった。


「リーン君ごめんなさいね。えっと、まずは常設依頼は何か達成できた?」

「はい、ホーンラビットを7匹討伐したので、素材の買取と一緒にお願いします」


僕はカバンからホーンラビットの素材と魔石を取り出す。

エルルさんはそれを受け取るとテキパキと処理をしていく。


「まずはホーンラビットの依頼からね。依頼量が1匹100ゴールドだから700ゴールドね。あと、素材の買取だけど、ちょっと解体の仕方が特殊みたいで値段が下がるわ。全部で4000ゴールドってとこね。いい?」

「はい、わかりました。それにしても僕の解体のやり方って変なんですか?」

「えっとね。皮の素材はとってもきれいになってるんだけど、その分、お肉の方に傷ができてるの。本当に微妙な差なんだけどね。大型のモンスターだとこれでもいいんだけど、小型の場合、お肉の価格が減っちゃうの。」

「そ、そうなんですか?」

「最近はこの解体の仕方は誰もしないんだけど、誰に習ったの?」

「えっと、商人のラックさんです。」

「ラックさん?・・・もしかしてエルブラント商会のラックさん!?」

「エルブラント商会?その商会かどうかは分かりませんが、森の中で迷子になっている時にお会いして、いっしょにこの街まで来たんです。」

「迷子って間違いないわね。この街一番の商会の商人よ。表にある武器屋は防具屋はラックさん傘下のお店よ。」


どうやらラックさんはとっても有名人だったようだ。

まあ、確かに迷子になる商人ってあんまりいないよね。


「それとキラータイガーの討伐なんだけど、緊急依頼で出てたんで、それが200000ゴールドになるわ。」

「200000ゴールド!?」

「そうよ。なにしろランクCのモンスターだからね」

「でも、僕は依頼を受けていないですよ?」

「ええ、この依頼は緊急の討伐依頼だから大丈夫よ。緊急の討伐依頼は依頼を受けていない冒険者が討伐しちゃうことが稀にあるから、その時は半額を渡していいことになってるの。」

「ということは、受けてたら400000ゴールドだったんですか」

「そうよ。でも、ランクCの依頼だからリーン君は受けれないけどね」


他の冒険者が残念がるはずだ。400000ゴールドがなくなったのだから。

そういえば、食事を奢るというはずだったけど、みんなどこに行ったんだろうか?


「ねえ、リーン君。そろそろキラータイガーの素材を出してもらいたいんだけど、いいかな?」

「キラータイガーは領主様に売ることになりました。」

「そ、そうなの?」

「はい、とても欲しがっておいででしたので。」

「・・・もしかして、キラータイガーの死体を丸ごと?」

「はい、傷が少なく状態が良いらしく」

「嘘!そんなレアモノだったの。見たい。」


エルルさんがすごく見たそうにしているので、ソラに頼んで外に出して見せてあげた。

エルルさんはキラータイガーの死体を食い入るようんい見ていると、リカルドさんが怒りの表情でやってきた。


「おい、エルル、まだか。モーガンの野郎が待ってんだ。急げ。」

「何でモーガンさんが待ってるんですか?」

「坊主と売買契約をするためだよ。」

「そ、そうですね。すぐに終わらせます。」

「そうだ、キラータイガーはこのままでいいぞ。モーガンが帰りにそのまま持って帰るそうだ。」

「わかりました」


エルルさんはテキパキと手続きを完了させると、僕に204700ゴールドを手渡してくれた。

この世界のお金の価値がまだわからないが、これで今晩の宿代は払えるはずだ。

ん?ということは、キラータイガーを領主様に売る必要はなかったんだ。

まあいっか。





領主様との商談はギルド長室で行われた。

ギルド長室に案内されると中にはリカルドさんと領主様、後はお付きの兵士が2人と見知らぬ青年が一人待っていた。


「遅くなってすみません」

「すまんな。エルルは素材フェチで珍しい素材を見たがるんだ。」


リカルドさんが一緒に謝ってくれた。

それにしても、素材フェチって、そんなのあるのか。


「構わんよ。まずはキラータイガーの方から片付けようか。リーン君。キラータイガーの死体、2500000ゴールドで本当に売ってくれるのか?」

「はい、問題ないです」

「そ、そうか。助かった。恩に着る」

「????」


領主様はそう言うと、後ろの兵士からカバンを受け取ると僕に渡す。

僕は訳も分からずカバンを受け取る。

カバンは素朴なデザインの肩から下げるタイプのーバッグだった。

この中にお金が入っているのだろうか。

その割にはとっても軽いのだが。


「それは魔法鞄(マジックバック)だ。中にお金が入っている。確認してくれ。」


領主様に言われて、僕はカバンの中を覗いてみると真っ暗な空間が広がっていた。

お金、ないんですけど。


「そうか、魔法鞄(マジックバック)は初めてか。カバンを触って、取り出そうとすると、中に入っている物の一覧が頭の中に浮かぶ。それで取り出したものを選ぶと出てくるぞ」


僕は言われたとおりにすると、中に入っている一覧が出てきた。


--------------------

・2500000ゴールド

・魔法のランプ

・魔法の水筒

--------------------


お金以外にも魔法のランプと魔法の水筒というものが入っている。

とりあえず、お金を出してみるか。

そう思った瞬間、大量の金貨が机の上に散らばった。


「・・・・・・」


「ハハハッ。慣れないものが魔法鞄(マジックバック)を使うとこうなるよな。慣れると物を出す場所を上手に指定できるようになるから心配いらない。入れるときは意識して入るように念じれば、勝手に入るぞ。やってみろ。」


僕は言われたとおりにやってみると机の上に散らばっていた金貨が見る見るうちに消えてなくなった。

一瞬で机の下に落ちていた金貨までなくなり、カバンの中身リストに2500000ゴールドが追加された。


「容量は1×1×1メートルだ。ソラ君がいるから大きめのものはいらないと思ったから、普段使いようのにしたんだ。」

「えっ?」

「ああ、スマン。言い忘れていた。その魔法鞄(マジックバック)と中に入っている魔法道具(マジックアイテム)は君へのお詫びの品だ。」

「お詫びの品?」

「ああ、元々あのキラータイガーはこいつの馬車を狙っていたんだ。それをどうやらこの馬鹿が君になすりつけたようなんだ。」


領主様はそう言って、隣に座っていた青年の頭を叩いた。

その瞬間、青年は土下座をして謝ってきた。


「領主、モーガンの息子でアルベルトという。今回は本当に申し訳なかった。あの時は気が動転していて。護衛の兵士が勝手にやったこととはいえ、弁明の余地はない。」

「えっと、とりあえず、頭を上げてください。どういうことなんですか?」


アルベルト様がいきなり土下座をしてきたため、僕も混乱してしまう。

土下座で謝られるなど、初めての経験だ。

しかも、事態を全く分かっていなかった。

僕はあたふたすることしかできなかった。




その後、リカルドさんが懇切丁寧に教えてくれた。

どうやら、自分を襲っているモンスターを他人に襲わせる行為をなすりつけと呼ぶらしい。

冒険者間ではなすりつけはマナー違反とされているようだ。

今回それを行ったのが、領主様の息子であるアルベルト様だったのが問題になったそうだ。

守るべき民にモンスターを押し付けて自分が助かろうとしたのだ。

非難の対象となっておかしくない行為であった。

もっとも、実際に行ったのは護衛の兵士で、すぐにそれに気づいたアルベルト様はすぐに引き返すように言ったが聞き入れられず、そのまま街まで帰る羽目になったそうだ。

アルベルト様はすぐさま門兵に事態を伝え、冒険者ギルドならびに父親の領主に僕の救助をするように頼んだそうだ。


「わかりました。謝罪は受け取りますので、どうか顔を上げてください。」


僕がそう言って、アルベルト様はやっと頭を上げてくれた。

お詫びの品は辞退しようとしたのだが、領主様に押し切られる形で受け取ることになった。






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