ソラ、さらにチート能力を手に入れる
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話を聞くと、キラータイガーの討伐はかなりの依頼料だったらしい。
しかも、素材もかなりの値段で取引されるそうだ。
久々の大きな仕事ということで、意気揚々とやってきたら、僕に掻っ攫われた形になったわけだ。
「分かりました。それじゃあ、僕とキラータイガーを皆さんで街まで運んで貰えませんか。依頼料として、今日の夕食を奢ります。ただし、キラータイガーの討伐依頼の依頼料を超えないくらいでお願いします。」
僕がそういうと歓声が起こった。
「お前、気前がいいな。別に気にしなくてもいいのに。」
「心配すんな。この人数の飲み食いじゃ、予算をオーバーすることはないから」
「ところで、キラータイガーの運搬はわかるが、お前の運搬ってどういうことだ?」
「実は、腰が抜けて動けないんです。」
「「「はあ?」」」
みんな、呆れていた。
そして、どうやってキラータイガーを倒したのか不思議がっていた。
僕がソラのことを説明すると、皆納得し、そして羨ましがりもした。
「おい、ソフィア」
「マスター、なんですか?」
リカルドさんの呼びかけに一人の女性冒険者が答えた。
「この小僧の治療を頼む。」
「はーい、ヒールっと。どう?」
「・・・治りました。ありがとうございます」
「いいのよ。おねーさん、その程度の怪我の治療なんて朝飯前だから。・・・もしかして、抱っこで連れて帰った方がよかった?」
「結構です」
僕は顔を真っ赤にしながら断った。
「さて、問題はこのキラータイガーだが、このまま持って帰りたいな。誰か、これが入る魔法鞄を持っていないか?」
「いや、マスター。さすがにこれだけでけえのが入る魔法鞄なんて持ってる奴はいないだろう」
「この大きさが入る魔法鞄だと10000000ゴールドはするはずですよ。」
「やっぱりそうだよな。できれば、解体せずに持って帰りたかったんだが・・・。仕方ない、この場で解体するか。」
そう言ってリカルドさんはキラータイガーに近づく。
その時、眠っていたソラが起き上がり、キラータイガーに近づいていった。
「ソラ、どうしたの?」
僕がソラに尋ねると、ソラは「ワン」と一声吠えると、キラータイガーを一飲みで食べてしまった。
「「「「「えええええっ!」」」」」
全員の驚きの声が木霊した。
いやいやいやいや。
普通に考えて、ソラが一飲みでキラータイガーを食べたとは考えずらい。
「ソラ、何をしたの?」
僕が尋ねるが、ソラは欠伸をして寝てしまう。
「おい、小僧。今のはこいつのスキルか?」
「いえ、いきなり物がなくなるスキルなんて持ってないはずですよ。」
「キラータイガーを倒してレベルが上がって新しいスキルを覚えたとかはないのか?」
リカルドさんに言われて僕はソラのスキルを鑑定してみる。
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ソラ
種族 スコティッシュテリア
年齢2歳
職業 従魔
スキル
身体強化(神)
探知(極)
幸運
胃袋(大食い)
称号・その他
転生犬
リーンの従魔
犬神の眷属
忠犬
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本当だ。変なスキルが増えている。
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胃袋(大食い)
胃袋にアイテムを収納することができる
収納できる容量は容積が100×100×100メートル、重量が10tまで
生き物、魔力が強すぎる物は収納できない
いやー、すごい大食いだね!
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収納系スキルだった。
チートスキルの王道だが、やっぱり僕じゃなくてソラになんだ。
ちょっとだけ寂しくなる。
「あの、リカルドさん。どうやら収納系スキルを覚えたみたいです。」
僕はソラにキラータイガーを出すように言うと、ソラはキラータイガーを吐き出した。
絵面的にはよろしくないが、とっても便利なスキルだ。
リカルドさんたちはものすごく驚いている。
「ま、まあこれで問題は解決だな。それじゃあ、街に帰ろうか」
リカルドさんが帰還を宣言した時、周りを警戒していた冒険者が声を上げた。
「マスター。領主が兵士を連れてこっちに向かってきてる。」
「あの脳筋がこっちに向かってきてるって!」
「脳筋って・・・。マスター、本人には絶対言わないでくださいね。
「わかってる。さすがの俺でもそこまで馬鹿じゃねえ。すまんが、帰るのはちょっと待ってくれ。」
リカルドさんはそういうと、領主がやってくるのを待った。
◇
「リカルド、キラータイガーはどこだ?」
領主もリカルドさんに負けず劣らずの筋肉で巨大な戦斧を片手で持っていた。
立派な口ひげを生やし、頭はきれいに剃っていて、見た目はまるで海賊だ。
少なくとも貴族には見えない。
「モーガン様、先に少年の救護です。」
「おお、そうだった。巻き込まれた少年は見つかったか?」
「ああ、こいつがそうだ」
リカルドさんはそう言って僕を指さした。
僕はどうしてよいか分からなかったが、とりあえず頭を下げておく。
「おう、どうやら無事逃げられたようだな。領主のモーガンだ」
「リーンと言います。初めまして。」
「ところで、キラータイガーはどっちに行った?」
「あの・・・。あそこです。」
僕がキラータイガーの死体を指さす。
「なんだ。もう退治していたのか。」
そして残念そうな顔でキラータイガーに近づき、観察を始める。
領主様が血相を変えて戻ってくると、リカルドさんに食って掛かる。
「おい、リカルド。あのキラータイガー、誰が倒したんだ?あの大きさのキラータイガーが一撃で倒されてるぞ。」
「ああ、倒したのはあいつだ」
「・・・あの子供か?」
領主様の目が点になっている。
信じられないといった感じなのだろう。
「リーン君。君が倒したってのは本当か?」
「いえ、僕じゃないです。倒したのは僕の従魔のソラです。」
僕はそう言ってソラを指さす。
寝ていたソラは「呼んだ?」と首を上げて僕を見るが、すぐに首を下ろして寝てしまう。
「あの従魔が倒した?」
領主様はソラをじっと眺めると「うむ、なるほど」と頷く。
「おい、リーン君。良ければ、君の従魔と戦わせてくれないか?かなり強いだろう。」
えっ?この人何言ってんの?
◇
領主様とソラの決闘はお付きの兵士が必死に止めてくれて実現しなかった。
もし実現していたら、僕は街に居られなかったかもしれない。
どんなに領主様が強くても、チート能力をたくさんもらったソラには敵わないだろう。
「それにしても、見事なキラータイガーだな。通常より少し大型だな。変異種かもしれんな。だが、一番すごいのは傷が少ないことだ。この腹部への打撃痕が一つだけだ。・・・リーン君、これを俺に売ってくれんか?」
「おいおい、モーガン。これほど見事なキラータイガーだ。欲しくなる気持ちもわかるが、競売に掛けたらいくらになると思ってんだ?」
「リカルド、テメーに言われなくてもわかってるよ。だが、聞くぐらいいいだろーが」
いつのまにかリカルドさんと領主様が口喧嘩を始める。
そういえば、リカルドさんは領主様にため口だけどいいのかな?
不敬罪とかにならないのかな?と思っていたら、近くにいた冒険者が「あの二人はね。昔、冒険者仲間でパーティーを組んでたんだ。」と教えてくれた。
それで仲がいいのか。
「あのー。仲がいいのは分かりましたんで、そろそろ喧嘩はやめませんか?」
「「誰が仲が良いって」」
二人が一斉に反論してくる。
うん、実にみごとにハモッてるな。
周りの兵士と冒険者たちが苦笑している。
「あの、別にお売りしても構わないですよ。」
「坊主、いいのか!競売に掛けたら3000000ゴールドは固いぞ」
「そうなんですか?まあ、領主様もそんなに買いたたくことはないと思いますんで、別に構わないです。それに競売だとすぐにお金が手に入らないでしょう?僕、今無一文なんで、それは困るんですよね。」
「坊主がそれでいいなら構わんが・・・」
僕の返答にリカルドさんは呆れていた。
初めはガッツポーズをしていた領主さまだったが、お付きの兵士に何か言われると顔色が青くなる。
そして、「3000000ゴールドは流石に・・・。だが・・・」と領主様が小声で呟きながら悩み続けていら。
結局、領主様が提示した金額は2500000ゴールドだった。
リカルドさんは「安すぎる」と言っていたが、僕は一発サインをした。
領主様はしきりに「安くてすまない」と謝ってくれた。