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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界でマイホーム
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月光草の栽培はできるのか?



僕の指摘は見事にスルーされた。三人ともそれどころではなかったからだ。

どうやら、調剤師にとって月光草はそれほど魅力的な材料のようだ。

カミーラさんはいろいろな薬の名前をブツブツと言っているし、ブルとチワは月光草の特徴を指を折りながら確認している。傍から見るとちょっと怖い。

月光草はよほど貴重な薬草なのだろう。実物があれが、鑑定さんに聞くことができるのだが、実物がないため、それもできない。

・・・鑑定さん、できないよね。



うん。返答はないな。

興奮している3人をよそに僕はウィーネに確認する。


「ねえ、その月光草?は毎年採取できるの?」

「うーん。無理じゃないかな。あの草は特定の条件じゃないと成長しないからまあ5年に1株ぐらいじゃないかな」

「・・・それだとダメだよね。」

「そっか」

「他に珍しい素材って獲れないの?」

「うーん、どうだろう。普通の薬草なら私の力で大量に用意できるんだけどね。」

「ああ、この前のアセロラ草とか?」

「そうそう。あの程度の薬草だったら勝手に周りに生えてくるの。」

「へー、すごいんだね。」

「そうよ。だからもっと敬ってもいいのよ」


ウィーネはそういって胸を張るが、実際に僕がウィーネ様、とかいうと寂しそうな顔をすると思うので言わないでおこう。

その後、いくつかの候補をウィーネが上げたがどれもいまいちだった。

そう、基本的に南の森にはそれほど貴重な資源がなかったのだ。

だから、高位の冒険者が訪れることがなく、ウィーネや陸じいが見つからずにいたのだった。


でも、どうしよう。なかなか手頃な上納品が見つからない。

カミーラさんたち3人は未だに興奮が収まっていない。

うーん、どうしよう。このままだと、直轄領ってことにすることができなくなる。

何とかならないだろうか?

3人は未だに月光草のことで舞い上がっている。

月光草がいっぱい手に入れば楽なのにな。

そう言って横を向くと丁寧に育てられている薬草が目に付く。

・・・そうだ。


「ねえ、ウィーネ。この畑で月光草を栽培したりすることってできるの?」

「えっ。月光草を栽培する!?うーん、できるけど、すごく大変よ。たぶん人間には無理だと思うけど・・・」


ウィーネはちょっと困った表情で答える。

どうやらこの案もダメなようだ、と思ったのはどうやら僕だけだったようだ。

カミーラさんたち3人が食いついた。


「ウィーネ様、どうやって栽培するんですか?」

「え、えっとそれはね。」


ウィーネはカミーラさんの圧力に圧倒されながら説明を始める。

なんだかよくわからない説明をしているウィーネ。

それを真剣に聞き入っている3人。

何だか先ほども見たような光景だ。


嬉々として聞き入っていたカミーラさんの表情がだんだん真剣なものになっていく。

どうしたんだろう。


「あの、ウィーネさま。今お聞きした月光草の育つ条件は間違いないのでしょうか?」

「何、疑っているの?」

「いえ、そのようなことはないです。お聞きした限りではこの畑でも栽培することが出来そうでしたので。もしよろしければ試してみたいと思いまして。」

「えっ、育てれるの?」

「そうですね。ウィーネ様に言われたとおりに作られるのなら難しいですが、ちょっと工夫すれば何とかなると思います。」


そういって、今度はカミーラさんがウィーネに説明を始める。

それをブルとチワとウィーネが熱心に聞いている。


「へえ、そんなやり方があるんだ。人間はよくそんなことを思いつくわね。」

「流石お師匠様です」


ウィーネは素直に感心し、ブルとチワは尊敬の眼差しでカミーラさんを見ている。

僕は・・・全く理解できませんでした。





カミーラさんはブルとチワに何か指示をすると二人はきびきびと動き出す。

二人が作業を始めたのを確認すると、カミーラさんは「モーガンの所に行ってくる」といって出て行ってしまった。

ブルとチワは目を輝かせ、尻尾をブンブン振りながら作業をしている。

ソラと一緒で嬉しい時の表現行動だろう。

特にチワの小さな尻尾がブンブン揺れる様はとっても可愛い。

モフモフ萌えーってキャラでなくてもこの光景にはちょっとグッとくるものがある。

ウィーネは微笑みながら二人の行動を見守っている。

しばらくは二人の行動をウィーネと眺めていたが、僕はすぐに退屈になった。

なにしろ僕には全く興味がない分野だったからだ。

そのため、庭の隅の方に行って、ソラのブラッシングをすることにした。

ソラにトリミングブラシを見せると喜んでダッシュでやって来た。

僕の目の前で座るとブラッシングを態勢になる。

僕がブラッシングを始めると、ソラは気持ちよさそうに目を細めて気持ちよさそうにしている。

僕が使っているトリミングブラシは魔法の効果がある。

癒し効果(中)・消臭効果(大)・毛のツヤ出し(中)の三つの効果がついている優れものだ。

暇なときにはマメにブラシを通しているので、ソラの毛はいつもふわふわでサラサラだ。

もちろん臭いなんてない。

30分ほどでトリミングは終了した。ソラは気持ちよかったのか、そのまま丸まって眠り込んでいる。

畑の方を見るとブルとチワはいまだに何かを忙しく作業している。

ウィーネは・・・飽きたのかどこかに行っていなくなっている。

カミーラさんはまだ帰って来ていないようだ。


「・・・ウィーネ、どこに行ったのかな?家の中かな?ソラ、行くよ」


僕が家に向かうとソラは慌てて起き上がると、僕の後をついてきた。

家の中に入るとウィーネが暇そうにソファに座ってくつろいでいた。


「あっ。リーン、やっと終わったのね。ソラ、おいで。」


僕を見かけたウィーネがソラを呼ぶ。

ソラは嬉しそうにウィーネに走っていくと飛びかかる。

普通の人だったら大ダメージではないか、というぐらいの勢いだったが、ウィーネは平然と受け止め、抱き上げる。



「すっごーい。ソラ、良かったね。毛がサラサラになってるね。」


そういってソラに頬ずりをする。うん。あれは気持ちいいんだよね。

僕は気になっていたことをウィーネに尋ねてみることにする。


「ねえ、ウィーネ。ブルとチワが頑張っているけど本当に可能なの?」

「どうなんだろう?私たち精霊は人間ほど育てるって行為には詳しくないの。私たちにとって植物は勝手に生えてくるものだから。カミーラに話を聞いた時、理論的に正しいのは分かったけど、実現可能かは分からなかったわ。」

「うまくいくといいよね。」

「そうね。そうしないと、陸じいが暴れだしでもしたら大変だもんね。」


陸じいという言葉を聞いてソラがビクッとして、ウィーネの腕から飛び降りる。

ソラは辺りをキョロキョロ見渡した後、安心したかのように丸まって寝てまう。

ほんとに怖かったんだろう。まあ、僕も怖かったけど。

その後、ウィーネとおしゃべりをしながら楽しい時間を過ごすのだった。






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