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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界でマイホーム
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どうする?



「ウィーネ様が私を友人だとおもっていらっしゃる?」


カミーラにとってウィーネは上位精霊であり敬い尊ぶものであった。

友人としてみるなどありえないことであった。

一方、ウィーネはカミーラと友人になりたいと思っていた。

そのギャップがあのウィーネの悲しげな表情だったのであろう。


「カミーラさん。そのことについては後でゆっくりウィーネと話し合ったらどうです。それよりも、この騒動を早くどうにかしたいんですが・・・。」

「そ、そうだったね。リーン、あんたが持って帰って来たものの中で問題なのは2つだ。万年苔とスターサファイアだ。」

「やっぱりこの二つですか」

「どうやら、薄々気づいていたみたいだね。まあ、今騒いでるのは万年苔の方だがね。」

「カミーラさんも陸王亀をご存知なんですね。」

「・・・私はウィーネ様と距離をとって接していたからね。南の山に陸王亀がいたことは先程初めて知ったよ。ウィーネ様から連絡があったのさ。」

「ウィーネから連絡?」

「そうさ。私はウィーネ様との窓口を仰せつかっているのさ。」

「窓口ですか?」

「ああ。上位精霊ともなるとその力は計り知れない。そのため、私たちのような称号持ちが上位精霊との仲を取り持つのさ。」

「称号持ち?・・・もしかして『ドライアドの友』って称号のことですか?」

「はははっ、『ドライアドと友』かい。凄い称号だね。私なんか『精霊の理解者』ってかなりの下のランクの物しか貰ってないのにね。」


カミーラさんはそういうと羨望の眼差しで僕を見る。

とはいっても、僕にはその有難味は全く分からなかった。

何しろ会って一日でこの称号を貰ったからだ。

最も僕が貰えたのも99パーセンとがソラのお陰なのだが・・・。


「まあ、この件については後で話すよ。スターサファイアはあんたがドライアド様から授かったということで問題ない。そして、陸王亀については詳しく聞かされなかったんだが、人間に危害を加える可能性はあるのかい?」

「ウィーネは陸王亀の上で攻撃魔法を放ったり、陸王亀にスキルを使わない限り大丈夫だって言ってたよ。それに会った時は怖かったけど、話してみるとそんなにじゃなかったよ。」

「そうかい、良かった・・・、話したのかい!?」


カミーラさんが今日一番の驚きの声を上げる。

その表情は恐怖で引きつっている。

僕が「はい」と答えると頭を押さえて考えこむ。


「あの・・・カミーラさん?」

「ああ、すまなかったね。陸王亀は巨大な亀だったろう。その巨大さと防御力の高さからそれだけでランクSのモンスターに認定されているんだが・・・、長年生きて高い知能を手に入れた陸王亀は高度な魔法を使えるようになり『(エルダー)』って称号を手に入れるんだよ。ランクはSS以上になっちまうんだよ」


カミーラさんは一気に説明をすると沈痛そうな面持ちである。


「あの・・・。僕があった陸王亀は間違いなく『(エルダー)』ですよ。」

「なんでそう言い切れるんだい?」

「それが・・・なぜか僕の鑑定スキルが勝手に鑑定してたんです。」

「・・・ちょっと待ちな。さっき、スキルはダメだって言ってなかったかい?」

「はい、そうなんですが、いつの間にか鑑定されていたんですよ。」

「・・・・・・はあ。そのことは後でウィーネ様に伝えておくよ。リーン。悪いけど、外の若造二人を呼んできてくれないかい。」


外の若造二人って、たぶんリカルドさんとモーガンさんだよね。

ギルド長と領主を若造ってすごい人だな、と思いつつも、部屋の外に行くと、扉の前にソワソワしなが立っていた二人と目が合う。


「小僧、内緒話は終わったか。」

「はい、カミーラさんが呼んでますよ」

「わかった、って、ここは俺の部屋なんだがな」


リカルドさんはブツブツ言いながらギルド長室に入っていった。





「・・・つまり、南の山に『(エルダー)』ランクの陸王亀がいると。そしてリーンは南の山の大精霊様の紹介で陸王亀にお会いし、万年苔を授かったということだな。スターサファイアもその大精霊様から授かったと」


カミーラさんと同様にリカルドさんとモーガンさんの真っ青になっている。

二人でなにやら話し始めたがなかなか結論が出なかった。


「モーガン、南の山を立入禁止にするとかのしなくていいのかい?」


業を煮やしたカミーラさんが二人に問いかける。

その言葉に二人は首を横に振る。


「いいか。立入禁止にすることは可能だ。だが、そのためには陸王亀や大精霊様のことを公にしないといけない。そうなると、違法で山に入るものが出てくる。その者が陸王亀の機嫌を損ねた時に『我々は法で立ち入りを禁止にしていた』は通じない。」

「じゃあ、このままでいいのかい」

「いいとは言ってないだろう。だが、いい方法が見つからないんだ。」


カミーラさんとモーガンさんの言い争いが始まった。

横で話を聞いていると、どちらの言い分も正しいような気がした。

人間が絶対に山に入らない方法なんてあるのだろうか?





そういえば、ウィーネは聖域には普通の人間はこれないっていってたよね。

結界か何かかな?


「あのカミーラさん、モーガンさん。森全体を結界で覆ったりとかはできないんですか?」


僕の言葉に言い争っていいた二人が言い争いを止めてこちらを向く。

目から鱗だったのか二人は呆気に取られていた。


「リーン、いい考えだよ。確かにそれなら人間の出入りはかなり制限できる。」


カミーラさんはかなりの食いつきようだったが、モーガンさんは違っていた。


「いや、それは難しいな。」


「何でですか?」

「森を丸ごと覆う結界だと俺の一存では決定できない。国王の裁決が必要だ。だが、上位精霊様がいる森となると・・・」

「問題があるんですか?」

「・・・ああ、一部の貴族が反対する可能性がある。精霊の力が強い場所は資源が豊富なんだ。」


カミーラさんがそれを聞いた瞬間、烈火のごとく怒りだした。


「ふん、情けないね。それを何とかするのがあんたの仕事だろう。そんなんだから、上位精霊様は人間との付き合いを制限するんだよ。」

「無理を言うな。上には逆らえん。それに問題はまだある。南の森はかなり大きい。そこをすべて立入禁止にすると周辺の村の経済が破綻する。」

「あっ」

「それに一番の問題はそれほどでかい結界を作るのは不可能だ。おそらく、王都の宮廷魔術師でも1人で小さな家一軒ぐらいの大きさの結界しか張れん。」

「・・・・・・」


僕の提案は根本的に無理だったようだ。

ウィーネはかなりの範囲を結界で覆っていたため、可能なのかと思っていたが、どうやらウィーネの力が規格外だったようだ。

こうして解決策のないまま時間だけが過ぎていった。





「ギルド長、お忙しいところすみません」


扉をノックし、エルルさんが入ってきた。

凄く困惑した表情だ。


「なんだ。この忙しいのに。急用か?」

「その・・・お客様です。」


エルルさんが小さな声で答える。

明らかにいつもと様子が違う。


「今は緊急事態だ。後にしてもらえ」

「いえ、それがその・・・。」


エルルさんは何とも言えない表情で、ごにょごにょと答える。

何ともはっきりしない返答にリカルドさんは怒りを募らせていく。


「エルル。誰が来たんだ。街の代表者か?それなら追い返せ。」

「それが・・・よくわからないんです。」

「はあ、何を言ってるんだ?わからないってどういうことだ。」

「その若い少女なんですけど、王家の紋章の入った短剣を持っているんですが・・・」

「王家の紋章だと!?」


その言葉にリカルドさんではなくモーガンさんが反応する。

慌ててエルルさんに詰め寄ると問いただす。


「おい。その方は王族か?」

「い、いえ。少なくとも私は知らない顔でした。それに、短剣なんですが、確かに王家の紋章が刻まれているんですが、ものすごく古いんです。少なくとも100年は前の物です。」

「本物なのか?」

「はい、紋章官に確認してもらったので間違いないです。」

「するとどこかで拾ったか。この忙しい時に面倒ごとが増えたな。エルル、確認するぞ。その少女は自分を王族と名乗ったか?」

「いいえ。昔、親しくしていた人に貰ったと。そして街に行くことがあれば使えと言われたと言ってました。」

「誰から貰ったか聞いたか?」

「はい、ラインバッハという名前だそうです」

「ラインバッハ?知らない名だな」


モーガンさんはリカルドさんの方を向くとリカルドさんも首を横に振る。

どうやら二人とも知らない名の様だ。

ラインバッハ・・・。どこかで聞いた気がするんだが。


「まあ、これで王族関係ではないと分かったな。あとでゆっくり尋問するから・・・」


モーガンさんがその少女を捕まえるように指示を出そうとしていた時、僕は思い出した。

ラインバッハ。ウィーネが言っていた冒険者の名前だ。


「待って」


僕は気がついたら叫んでいた。

僕がいきなり叫んだことで、全員が僕に注視した。


「あ、あの。その人、僕の知り合いかもしれないです。」

「知り合い?」


モーガンさんが首を傾げる。


「はい。あの確認ですが、300年ほど前のランクSSの冒険者でラインバッハて人はいないですか?」

「「「「300年前?」」」」


僕の質問にここにいる全員が不思議そうな顔をする。

確かに普通に考えればそうだよな。

不思議に思いつつも、皆、思い出そうとしてくれる。


「300年前か。俺はよく知らんな。リカルド、知ってるか?」

「いや、俺もそういうことには疎くてな。」


と役に立たない能筋二人組だったが、流石は優秀な受付嬢のエルルさんは知っていた。


「ラインバッハ・メタファーのことですか?当時の国王の弟で確かに300年前に活躍されたランクSSの冒険者です。ただ、それと今回のことと何か関係があるんですか?」

「うん、たぶんその少女、僕が南の森で出会った精霊だと思う」


僕の発言によりギルド長室に驚きの声が響き渡った。




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